陰に潜む“影”
[1/8]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
何時ものようにパンをかじりながら登校していた瀧馬は、前方にかなり不思議なものを目にした。
それは、トゥアールがコルセットとギブスをしながら元気良く歩いている光景だった。
「大怪我人じゃねぇか、何で登校してんだよ……」
『ぱっと見全治2ヶ月は下らねェナ』
傍を通る他の生徒は大して気にしてもおらず、そばに付き添って歩いている総二や愛香でさえ心配している様子は感じられない。
瀧馬は本気で心配になっているというのにだ。
「……やっぱり俺がおかしいんだろうか」
『前もいったが相棒は正常ヨ。常識人だからこそ正常ヨ。あいつ等がおかしいんだッテ』
「ああ、分かってはいるんだけどな……」
もしかすると、今の自分の様に何が正しいのか間違っているのか分からなくなって、もう深く考えるのが面倒臭くなり一緒になって変態行為に走る者もいたんじゃないかと、瀧馬はそう思いはじめた。
現に、彼自身だって流石にアチラのノリに着いて行こうとは思いきれないものの、無気力になり自身の考えが正しいのかも分からなくなりかけていたのだから。
何とかラースの助言で頭のモヤモヤを取り除いた瀧馬だったが、前で後少ししたらこの怪我人セットも外れますという、意味不明な言葉をトゥアールが叫んだのを聞いて、変人の所為では壊れたくないので………瀧馬は考える事を止めた。
教室に入って無言で席に着き、瀧馬はホームルームがはじまるまでの談笑の時間を、まるで死刑判決を受ける前の在任の如く項垂れながら、何をするとでも無く過ごしていく。
落ち込んでいる彼を不安に思ったのか後ろの席のクラスメイトが声を掛けようとするも、元々の人相の悪さと相まって不気味な雰囲気が7割増しになっていたので、声を掛けようにも踏みとどまってしまい掛けられていない。
そうこうしている内に時間は過ぎて、樽井担任が何時も通りゆっくりドアを開けて教室へ入ってきた。
樽井担任は教卓の前に付くと、何時も通りの気だるげな声でゆっくり告げる。
「え〜とぉ、今日は転入生を紹介します〜」
先生が入ってもいいと許可を出すと、銀髪を靡かせ知的な印象を抱かせながら、トゥアールが入ってきた。
素行は兎も角美貌は中々の物なので、男女共に溜息を洩らしている。
瀧馬は彼女の人となりを既にある程度知っていかことから、隣の総二が当人でもないのにすごく緊張している事に少しばかり同情した。
と、愛香の方を向き、何やらアイコンタクトを交わし始める。……しかしながら、総二は問題を起こして欲しくは無いといった表情だったのに対し、愛香は暴力を使っても止める気満々といった表情で、アイコンタクトは
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ