第2部 風のアルビオン
第8章 ニューカッスルの決戦前夜
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『全軍前へ!全軍前へ!全軍前へ!』今宵、美味い酒のせいで、いささか耳が遠くなっております。はて、それ以外の命令が、耳に届きませぬ!」
その勇ましい言葉に、集まった全員が頷いた。
「おやおや!今の陛下のお言葉は、なにやら異国の呟きに聞こえたぞ?」
「耄碌するには早いですぞ!陛下!」
老王は、目頭を拭い、馬鹿者どもめ……、と短く呟くと、杖を掲げた。
「よかろう!しからば、この王に続くがよい!さて、諸君!今宵は良き日である!重なりし月は、始祖ブリミルからの祝福の調べである!よく、飲み、食べ、踊り、楽しもうではないか!」
辺りは喧騒に包まれた。
こんな時にやってきたトリステインからの客が珍しいらしく、王党派の貴族たちが、かわるがわるルイズ達の元へとやってきた。
貴族たちは、悲嘆にくれたようなことは一切言わず、3人に明るく料理を勧め、酒を勧め、冗談を言ってきた。
「大使殿!このワインを試されなされ!お国のものより上等と思いますぞ!」
「なに!いかん!そのようなものをお出ししたのでは、アルビオンの恥と申すもの!このハチミツが塗られた鳥を食してごらんなさい!うまくて、?が落ちますぞ!」
そして最後に、アルビオン万歳!と怒鳴って去っていくのであった。
ウルキオラは理解できなかった。死を前にして明るく振る舞う人間どもは、勇ましいと言うより、この上なく哀れに見えた。
ルイズはもっと感じるところがあったらしい。
頭を振ると、この場の雰囲気に耐え切れず、外に出て行ってしまった。
ウルキオラは隣のワルドに追いかけるよう促した。
ワルドは頷くと、ルイズの後を追った。
ウルキオラはそれを見つめ、ため息をつくと、壁にもたれ掛かった。
ウルキオラがそんな風にしているのを見て、座の真ん中で歓談していたウェールズが近寄ってきた。
「ウルキオラ君…君は本当にラ・ヴァリエール嬢の使い魔なのかい?」
「そうだが、なぜだ?」
ウルキオラはウェールズに聞き返した。
「いや、なに、人が使い魔とは珍しいのでね」
「俺は人間じゃない」
この世界に来て、何回目になるのかわからない同じ回答をした。
ウェールズはそんなウルキオラの答えに驚いた顔をした。
「人間ではない?人間にしか見えないが…」
ウルキオラは服のファスナーを開けながら言った。
「俺の種族は虚だ」
ファスナーが下がり、ウルキオラの胸が露わになる。
「なっ…胸に…穴が…なぜそのような状態で生きていられるのだ…」
ウェールズは、ウルキオラの胸に空いた穴に驚きを隠せなかった。
「これは、人間から虚になった時に失ったものだ…痛みはないし、生命に問題もない」
ウェールズ
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