第2部 風のアルビオン
第8章 ニューカッスルの決戦前夜
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なるほどな」
ウルキオラは、どの世界でも神と崇められる者の力は絶大なものだ、と思った。
「とにかく、姫様は、殿下と恋仲であらせられたのですね?」
「昔の話だ」
ルイズは、熱っぽい口調で、ウェールズに言った。
「殿下、亡命なされませ!トリステインに亡命なされませ!」
ワルドがよってきて、すっとルイズの肩に手を置いた。
しかし、ルイズの剣幕は収まらない。
「お願いでございます!私たちと共に、トリステインにいらしてくださいませ!」
「それはできんよ」
ウェールズは笑いながら言った。
「殿下!これは私のお願いではございませぬ!姫様の願いでございます!姫様の手紙には、そう書かれておりませんでしたか?私は恐れ多くも姫様のお遊び相手を務めさせて頂きました!姫様の気性は大変よく存じております!あの姫様がご自分の愛した人を見捨てるわけがございません!おっしゃってくださいな、殿下!姫様は、多分手紙の末尾であなたに亡命をお勧めになっているはずですわ!」
ウェールズは首を振った。
「そのようなことは、1行も書いていない」
「殿下!」
ルイズはウェールズに詰め寄った。
「私は王族だ。嘘はつかぬ。姫と、私の名誉に誓って言うが、ただの1行たりとも、私に亡命を勧めるような文句は書かれていない」
ウェールズは苦しそうに言った。
その口ぶりから、ルイズの指摘が当たっていたことが伺えた。
「アンリエッタは王女だ。自分の都合を、国の大事に優先させるわけがない」
ルイズは、ウェールズの意思が果てしなくかたいのを見て取った。
ウェールズは、アンリエッタを庇おうとしているのだった。
臣下のものに、アンリエッタは情に流される女と思われるのが嫌なのだろう。
ウェールズは、ルイズの肩を叩いた。
「君は正直な女の子だな。ラ・ヴァリエール嬢。正直で、真っ直ぐで、いい目をしている」
ルイズは、寂しそうに俯いた。
「忠告しよう。そのよいに正直では大使は務まらぬよ。しっかりしなさい」
ウェールズは微笑んだ。
白い歯がこぼれる。
魅力的な笑みだった。
「しかしながら、亡国への大使としては適任かもしれぬ。明日に滅ぶ政府は、誰より正直だからね。なぜなら、名誉以外に守るものが他にないのだから」
それから机の上に置かれた、水が張られた盆の上に載った、針を見つめた。
かたちからいって、それが時計であるらしかった。
「そろそろ、パーティーの時間だ。君たちは、我らが王国が迎える最後の客だ。是非とも出席してほしい」
ウルキオラたちは部屋の外に出た。
ワルドは居残って、ウェールズに一礼した。
「まだ、なにか御用がおありかな?子
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