第2部 風のアルビオン
第8章 ニューカッスルの決戦前夜
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ルイズは躊躇うように問うた。
至極あっさりと、ウェールズは答える。
「ないよ。我が軍は300。敵軍は5万。万に一つの可能性もあり得ない。我々にできることは、はてさて、勇敢な死に様を連中に見せることだけだ」
ルイズは俯いた。
「殿下の、討ち死になさる様も、その中には含まれるのですか?」
「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」
傍でやり取りを見ていたウルキオラは黒崎一護とは真逆な存在だな、と思った。
勝利を諦めている。
まあ、それも当然のことだが、しかしながら、やはり、黒崎一護とは真逆なだと思った。
ルイズは深々と頭を垂れて、ウェールズに一礼した。
言いたいことがあるのだった。
「殿下……、失礼をお許し下さい。恐れながら、申し上げたいことがございます」
「なんなりと、申してみよ」
「この、ただいまお預かりした手紙の内容は、これは……」
「ルイズ」
ウルキオラがたしなめた。
バカかこいつは、と思った。
でも、ルイズはきっと顔を上げると、ウェールズに尋ねた。
「この任務を私に仰せつけられた際の姫様のご様子、尋常ではありませんでした。そう、まるで、恋人を案じるような……。それに、先ほどの小箱の内蓋には、姫様の肖像が描かれておりました。手紙に接吻なさった際の殿下の物憂げなお顔といい、もしや、姫様と、ウェールズ皇太子殿下は……」
ウェールズは微笑んだ。
ルイズが言いたいことを察したのである。
「君は、従妹のアンリエッタと、この私が恋仲であったと言いたいのかね?」
ルイズは俯いた。
「そう想像致しました。とんだご無礼を、お許し下さい。してみると、この手紙の内容とやらは……」
ウェールズは、額に手を当て、言おうか言うまいか、ちょっと悩んだ仕草をした後、言った。
「恋文だよ。君が想像している通りのものさ。確かにアンリエッタが手紙で知らせたように、この恋文がゲルマニアの皇室に渡っては、まずいことになる」
ウェールズは続けて言おうとしたが、ウルキオラからの質問でそれは遮られた。
「過去の恋文ごときで、婚約が破綻になるのか?」
ウェールズは微笑しながら答えた。
「ウルキオラ君…君の言うとおりさ…たかが恋文程度では婚約は破綻にはならない。しかし、彼女は始祖ブリミルの名において、永久の愛を私に誓っている。始祖に誓う愛は、婚姻の際の誓いでなければならない。この手紙が白日の下に晒されたならば、彼女は重婚の罪を犯すことになってしまうであろう。ゲルマニアの皇室は、重婚を犯した姫との婚約は取り消すに違いない。そうなれば、なるほど同盟相成らず。トリステインは一国にて、あの恐るべき貴族派に立ち向かわねばなるまい」
「
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