第2部 風のアルビオン
第8章 ニューカッスルの決戦前夜
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告なのですが、叛徒どもは明日の正午に、功城を開始するとの旨、伝えて参りました。まったく、殿下が間に合って、よかったですわい」
「してみると間一髪とはまさにこのこと!戦に間に合わぬは、これ武人の恥だからな!」
ウェールズたちは、心底楽しそうに笑いあっている。
ルイズは、敗北という言葉に、顔色を変えた。
つまり、死ぬということだ。
この人たちは、それが怖くないのだろうか?
「して、その方たちは?」
パリーと呼ばれた老メイジが、ルイズたちを見て、ウェールズに尋ねる。
「トリステインからの大使殿だ。重要な要件で、王国に参られたのだ」
パリーは一瞬、滅び行く王政府に大使が一体何のようなのだ?といった顔つきになったが、すぐに表情を改めて微笑んだ。
「これはこれは大使殿。殿下の侍従を仰せつかっておりまする、パリーでございます。遠路遥々ようこそこのアルビオン王国へいらっしゃった。大したもてなしは出来ませぬが、今夜はささやかな祝杯が催されます。是非とも出席くださいませ」
ルイズたちは、ウェールズに付き従い、城内の彼の居室へと向かった。
城の一番高い天守の一角にあるウェールズの居室は、王子の部屋とは思えない、質素な部屋であった。
木でできた粗末なベッドに、椅子とテーブルが1組。壁には戦の様子を描いたタペストリーが飾られている。
王子は椅子に腰掛けると、机の引き出しを開いた。
そこには宝石が散りばめられた小箱が入っている。
首からネックレスを外す。
その先には小さい鍵がついていた。
ウェールズは小箱の鍵穴にそれを差し込み、箱を開けた。
蓋の内側には、アンリエッタの肖像が描かれている。
ルイズとワルドがその箱を覗き込んでいることに気づいたウェールズは、はにかんで言った。
「宝箱でね」
中には1通の、手紙が入っていた。
それが王女のものであるらしい。
ウェールズはそれを取り出し、愛しそうに口づけした後、開いてゆっくりと読み始めた。
何度もそうやって読まれたらしい手紙は、既にボロボロであった。
読み返すと、ウェールズは再びその手紙を丁寧にたたみ、封筒に入れると、ルイズに手渡した。
「これが姫から頂いた手紙だ。この通り、確かに返却したぞ」
「ありがとうございます」
ルイズは深々と頭を下げると、その手紙を受け取った。
「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号が、ここを出港する。それに乗って、トリステインに帰りなさい」
ルイズは、その手紙をじっと見つめていたが、そのうちに決心したように口を開けた。
「あの、殿下……。先程、栄光ある敗北とおっしゃっていましたが、王軍に勝ち目はないのですか?」
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