第2部 風のアルビオン
第8章 ニューカッスルの決戦前夜
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「地形図を頼りに、測量と魔法の明かりだけで航海することは、王立空軍の航海士にとっては、なに、造作もないことなのだが」
貴族派、あいつらは所詮、空を知らぬ無粋者さ、とウェールズは笑った。
しばらく航海すると、頭上に黒々と穴が開いている部分に出た。
マストに灯した魔法の明かりの中、直径300メイル程の穴が、ぽっかりと空いている様は壮観だった。
「一時停止」
「一時停止、アイ・サー」
掌帆手が命令を復唱する。
ウェールズの命令で、『イーグル』号は裏帆を打つと、しかるのちに暗闇の中でもきびきびした動作を失わない水兵たちによって帆をたたみ、ぴたりと穴の真下で停船した。
「微速上昇」
「微速上昇、アイ・サー」
ゆるゆると『イーグル』号は穴に向かって上昇していく。
『イーグル』号の航海士が乗り込んだ『マリー・ガラント』号が後に続く。
ウルキオラが頷いた。
「まるで空賊だな。ウェールズ」
「まさに空賊なのだよ。ウルキオラ」
穴に沿って上昇すると、頭上に明かりが見えた。
そこに吸い込まれるように、『イーグル』号が上っていく。
まばゆい光にさらされたかと思うと、艦はニューカッスルの秘密の港に到着していた。
そこは、真っ白い発行性の苔に覆われた、巨大な鍾乳洞の中であった。
岸壁の上に、大勢の人が待ち構えていた。
『イーグル』号が鍾乳洞の岸岸に近づくと、一斉にもやいの縄が飛んだ。
水兵たちは、その縄を『イーグル』号に結わえつける。
艦は岸壁に引き寄せられ、車輪のついた木のタラップががらごろと近づいてきて、艦にぴたりと取り付けられた。
ウェールズは、ルイズたちを促し、タラップを降りた。
背の高い、年老いた老メイジが近寄ってきて、ウェールズの労をねぎらった。
「ほほ、これはまた、大した戦果ですな。殿下」
老メイジは、『イーグル』号に続いてぽっこりと鍾乳洞の中に現れた『マリー・ガラント』号を見て、顔をほころばらせた。
「喜べ、パリー。硫黄だ、硫黄!」
ウェールズがそう叫ぶと、集まった兵隊が、うおぉーっと歓声をあげた。
「おお!硫黄ですと!火の秘薬ではござらぬか!これで我々の名誉も、守られるというものですな!」
老メイジは、おいおいと泣き始めた。
「先の陛下よりおつかえして60年……、こんな嬉しい日はありませぬぞ、殿下。反乱が起こってからは、苦渋を舐めっぱなしでありましたが、なに、これだけの硫黄があれば……」
にっこりとウェールズは笑った。
「王家の誇りと名誉を、叛徒どもに示しつつ、敗北することができるだろう」
「栄光ある敗北ですな!この老骨、武者震いが致しますぞ。して、ご報
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