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FOOLのアルカニスト
半端者と異端者
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、妻と別れさせられるようなことはないだろう。しかし、娘は話が異なってくる。一族の縛りに耐え切れずに一族を出奔した卜部だが、彼は卜部氏の直系であり、優秀な悪魔召喚師である。その血脈の価値は高い。当然、その娘もである。一族の者達がそれを見逃すはずがない。卜部が帰参すれば、間違いなく娘を差出せと要求されるだろう。いや、下手をすれば帰参の条件にすらされうる可能性すらあるのだ。己の保身の為に娘を差し出すなど、卜部は死んでも御免であった。

 「そうじゃな。だが、それでも妻子の安全を考えるなら、戻るべきじゃろう。半端者のお前には、悪党にもなりきることも、妻子を守り通すことも、手に余るじゃろう。お前は必ず後悔することになるぞ」

 だが、卜部の危惧は雷鋼も百も承知である。10年前まで、彼もまた一族に属していたのだから。それでもなお言わざるをえなかったのは、一重に卜部を心配しているからである。雷鋼なりに卜部を思いやってのことだ。

 「俺がどうなろうと妻と娘だけは守りきってやるさ!」

 しかし、そんな雷鋼の思いは卜部には届かない。卜部は一瞬足を止め、背を向けたまま叫ぶように言い放つと、最早反すことはないと言わんばかりに、足早に去っていく。その背中には断固たる拒絶の意思が見て取れた。

 「ふん、大馬鹿者めが……」

 その背中を見送りながら、雷鋼は寂しそうに呟いたのだった。
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