半端者と異端者
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人の妻子を持ち、非情に徹し悪党にもなりきれず、一方で、力を求めながら、人であることを捨てきれない為に自身の成長を止めている卜部の抱える矛盾であった。
「ふん、返す言葉もないか……とっとと失せぬか。この半端者が!お前の頼み通り、この餓鬼は儂が引き取ってやろう。だが、勘違いするでないぞ。この餓鬼を引き取るのは、儂自身の目的の為じゃ。ゆえに、この餓鬼が目的を達せない器と悟った時は、躊躇なく殺す。間違っても幸福な人生を送れるなんてことはないということを心しておくがいい!」
「…最初から期待しちゃいねえよ。いくぞ、リャナンシー」
呻くように卜部は吐き捨て、倒れ伏した透真に背を向ける。最早、彼のすべきことはなく、後は透真がどうなろうと知ったことではないからだ。リャナンシーも僅かな逡巡の後に主人の後を負う。
「広坊、1つだけこれが最後の忠告じゃ。現状のようなことを続けるなら、お前はいつか必ずその報いを受けることになるじゃろう。悪いことは言わん。妻子との縁を切れ。さもなくば、ファントムを抜け一族に戻れ。悪魔召喚プログラムがばらまかれて、悪魔召喚術が秘儀でもなんでもなくなった今なら、異端の儂と違い、お前が頭を下げれば、一族もお前の復帰を認めるじゃろう」
「そんなこと出来るわけねえだろ。それに、娘が生まれた以上、一族に戻るの絶対にありえねえ!連中に娘をいいように使われてたまるか!」
源頼光とその四天王の末裔によって構成される、歴史ある有力な悪魔召喚師一族といえば聞こえはいいが、その内実はけして褒められたものではない。異能力とは血脈に宿るがゆえに、結婚は異能者同士に限られ、その能力を保つために近親婚すら平然と行われていたのだから。そして、一族の秘伝を守るために徹底した秘密主義を貫き、自由を縛ってきたのだから。
だが、何者かが作成した悪魔召喚プログラムが流出し、COMPが一般化した今現在において、一族が秘伝としてきた悪魔召喚術は最早秘儀とは呼べないものになってしまっている。それどころか、COMPを用いないそれは、古臭く劣るものでしかないのだ。利点が零というわけではないが、余程の力ある召喚士にしか関係のないことである以上、それは一族の者にとっても変わらない。出奔した当時なら、帰参は認められなかった(それどころか抹殺される可能性すらあった)だろうが、今や一族の秘伝を守る意味は失われ、卜部の罪を問う理由もなくなってしまったのだ。
ゆえに、卜部が望めば帰参は可能だろう。確かに、妻子の安全を考えるなら、ファントムにいるよりは戻った方がいいのだ。ファントムの闇は深く、一族のそれとは比べものにならないのだから。ただ、そこで問題となるのが、卜部の妻子である。より正確に言うなら、娘が問題であった。すでに結婚して子を成してしまっている以上
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