半端者と異端者
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断は賢明であり、当然の処置といえよう。透真もそれに文句をつけるつもりはない。ただ、紹介された師となる人物の選考についてだけは、大いに物申したいところだが……。
「ようやく立ちおったか。ほれほれ、どうしたどうした?逃げているばかりでは、どうにもならんぞ!」
立ち上がった透真に対して、指弾による石の弾丸の 雨を嬉々として降らせる翁。
この翁、卜部と同じく歴史ある有力な悪魔召喚師一族に生まれた男であり、名を『渡辺 雷鋼』、祖先である頼光四天王筆頭『渡辺 綱』の家系最強たる『鋼』の名を頂き、かつ字こそ違えど、主たる『源 頼光』の読みを与えられた天才である。しかし、純粋に個の強さを求め、強くなる為なら手段を選ばなかった為に、最終的に一族と道を違え、放逐された異端であるそうである。
卜部とは、同じく頼光四天王『卜部 季武』の末裔であるがゆえに、家族ぐるみの付き合いがあり、幼少の卜部の面倒をみた事がある人物であった。放逐された後も、卜部が一族を飛び出した後に様々な援助をしたりするなど、卜部にとっては恩人と呼べる人物であるそうだ。
しかし、透真にとっては、雷鋼は最恐最悪な人物であった。
出会いからして、最悪だった。なにせ、自己紹介以前に初っ端から殺されかけたのだから……。
卜部に連れられ、雷鋼の隠棲する家へとやって来た透真を迎えたのは、鋼の如き雷鋼の剛拳であった。不意を突かれた出会い頭の攻撃をド素人の透真に避けれるはずもなく、透真は無様に吹き飛ばされることになった。その結果、肋骨を数本砕かれ、内臓の一部にダメージすら負い、強烈な痛みと衝撃で立ち上がることすらできない透真だったが、どうにかこうにか生きてはいた。
「よし、生きておるな。反応できなかったのはマイナスじゃが、儂が殺す気で撃った拳を生きて耐え切ったんじゃから、一応合格じゃ。これで用は済んじゃろ?広坊、その餓鬼置いて、さっさと帰るんじゃな。儂はお前みてえな半端者には用はないのでな」
その様子を睥睨しながら、雷鋼は満足げに頷き、一方で卜部に吐き捨てるように毒を吐く。
「坊はいい加減やめて欲しいんだがな……。それに半端ってはどういう意味だ?」
「喝!ファントムなんぞに所属しながら、一般人の妻子持ってるお前が半端者じゃなく何だと言うんじゃ!大体、お前自身が一番理解しているはずじゃ。己が悪党になりきれない偽善者で、人であることを捨て切れない臆病者であることをな」
「…」
雷鋼の大喝と共に、強烈な指摘を受ける。卜部自身、考えないようにしていただけであって、自覚はあったために返す言葉がでない。それは、裏世界、その中でももっぱら恨みを買う側であり、多くの敵対組織をもち悪とされるファントムソサエティに属しながらも、表の温かみを求めて一般
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