半端者と異端者
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「ほらほら、どうした餓鬼。よけるかどうかしないと死んじまうぞ!」
地霊プッツ、オーストリアに伝わる気まぐれな森の精。幸運を与えるとも不幸を与えるとも言われている悪魔だ。が、今透真が与えられているのは、間違いなく不幸だろう。なにせ、射撃の的にされているのだから……。
「ソラソラソラ!ちんたらしてると蜂の巣にしちまうぞ!」
<ガン・ビーム>で的状態にし、<ガン・フォーン>で撃ち抜く。卜部の仲魔であるプッツが得意とする単体での連携攻撃である。それが卜部所有のセーフハウスの地下にある鍛錬室で、縦横無尽に放たれる。的になるのは10にも満たない少年、透真だ。
常人では反応すらできぬであろうそれを、透真は地面を転がったり、わざと転んだりしながら、無様ではあるが、それをかわしてみせる。反撃が許されていないわけではない。というか一撃を入れることが、この戦闘訓練の合格条件なのだが、ペルソナを顕現させる余裕はない。多少なりとも、精神集中がいるからだ。ましてや、手に入れたばかりの異能である。その速度はけして速いとはいえない。
だが、そんな悠長なことをしていれば、蜂の巣である。専用ペルソナ『トウヤ』ならば、飛び道具に分類される<ガン・フォーン>を無効化できるが、そんなことをすれば隠している『トウヤ』の存在がばれるし、余計な警戒を招きかねない悪手だろう。それに、ペルソナチェンジも瞬時にはできない。習熟すればできるかもしれないが、少なくとも今の透真には不可能であった。
「どうした、どうした。そんな様じゃ、連中に復讐することなんざ、夢のまた夢だぞ!」
卜部に自分の面倒をみるといわれた透真は、それに感謝するとともにある宣言をした。それが即ちこの戦闘訓練につながったのだ。透真は自身の生きる目的として『桐条への復讐』をしたいといったのだ。それを聞いた卜部は当初渋ったものの、無駄飯ぐらいになるよりはましかと考え直し、了承した。
なぜなら、ペルソナという異能をもち、すでに戸籍すら抹消された死人同然の透真は、すでに裏の世界にどっぷりつかっており、そこで生きていく他なかったからだ。まあ、新しく戸籍を得る、戸籍を偽造ということも考えられたが、金も手間も半端じゃなくかかるものであるし、流石に卜部にそこまでしてやる義理はない。無駄飯ぐらいよりは少しでも戦力となるならと考えた結果が、この訓練というわけである。
客観的にみるとLV5にLV20をぶつけるとか鬼畜の所業だったが、卜部からすればそれは必要不可欠な当然の行為であった。即ち、今現在における透真の戦力分析&能力解析である。サマナーである卜部は『ペルソナ』という異能について知識とは知っていても、その詳細は知らないし、実態も把握していないのだから。鍛えるにしても、現状の力量把握は必要だし、万が一を
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