第一部 学園都市篇
断章 アカシャ年代記《Akashick-record》
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高くなったテーブル上、そこでしどけなく横たわる……絢爛たる娘。墨を流したように美しい黒髪を結い、螺鈿細工を施した簪を差した。血の色よりなお深い、蛇じみた鋭さと無慈悲さを映す緋の瞳の。
喪服のような、しかし紅色の錦糸で多数の彼岸花の柄をあしらわれた豪奢な振袖の上に、男物の黒い外套を肩に羽織った姿の。奇矯な、実に奇矯な和装の娘。
「“悪────」
《これこれ、無粋な名で呼ぶでないわ。そうじゃのう、この姿の時は……》
それを睨み付けるながら『“悪心影”』と、その名を呼ぼうとして制された。腰に佩いた『圧し斬り長谷部』、魂の抜けたような軽さで。
しかし、そこから響くように脳に流し込まれた声が、呆気に取られる嚆矢に向けた嘲笑と共に。
「織田 市媛……とでも呼ぶが良いぞ。呵呵呵呵呵呵呵呵!」
『織田 市媛』と名乗った彼女は、腰帯に挿している嚆矢の拳銃『南部式拳銃』と私物らしき脇差しに扇子。
その内、扇子を取り出して開いて。黒地に赤字で『天下布武』の四字の画かれたそれで口許を隠しながら、からからと哄笑した。
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