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久し振り
第四章

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第四章

「杏ちゃんってあんな言葉使わなかったんだけれど」
「そうだったのか」
「そうだよ。全然な」
「それでだけれどな」
 今度は友人から彼に言ってきた。
「この娘ってよ」
「ああ、何だ?」
「大きいか?」
 このことを言うのである。
「そんなに」
「いや、小さいよな」
 それは俊も認めることだった。これは目で見てもそのままである。
「絶対に」
「だよな。けれどあの娘なんだよな」
「ああ。西園寺杏ちゃんな」
 上の名前も出すのだった。
「はい、西園寺杏です」
 彼女の方からも名乗るのだった。にこりとして笑って礼儀正しく名乗ってからだ。
「宜しく御願いします」
「やっぱりそうなんだよな」
 ここでまた首を傾げさせて腕まで組む俊だった。
「何でこんな風になったんだ?」
「それはこの場合使う言葉か?」
「多分違うな」
 俊もこのことは自覚していた。
「それは」
「だよな。それはな」
「それでお兄ちゃん」
 杏は相変わらず俊をこう呼んできている。笑顔で。
「お久し振りです。それでなんですけれど」
「それで?」
「お話あるんですよね」
「あっ、ああ」
 杏の言葉にそのまま頷きはした。
「久し振りに会ったしな」
「はい、御願いします」
「しかし」
 またしても首を傾げることになった。
「何なんだろうな、この変わり方は」
「まあいいから話しような」
「そうだな」
 何はともあれ三人で話すことになった。場所を変えてテーブルに向かい合って座りながら。そのうえで三人で話をしたのである。
 話を終えるとだった。杏は店を出たところで頭を深く下げて。それで二人に挨拶をした。
「また御願いします」
「あっ、うん」
 彼女のその言葉に応える俊だった。友人は横で見ているだけである。
「それじゃあまたな」
「また今度」
「またな」
 こう言い合って別れた。その時も杏は頭を深々と下げるのだった。
 俊はその彼女と別れてから。友人に対して話すのだった。
「あのな」
「あの娘か」
「間違いなく杏ちゃんなんだよ」
 このことは間違いないというのだ。
「しかしな」
「しかし?」
「何であんなに変わったんだ?」
 とにかく言うのだった。
「全然別人なんだけれどな」
「俺も話を聞いていて驚いてるんだけれどな」
 彼もだというのだ。

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