■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆自己の非同一性
第五十五話 シノンが目指すもの
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べきか言葉に詰まり、その場に一瞬の沈黙が訪れたが――気づいたらミドリは無意識につぶやいていた。
「守らなければ――」
シノンの他者を拒絶するような感情に触れた所為か、その瞬間ミドリの思考には何者かの感情が急激に流れこんできていた。圧倒的な恐怖感。自らの分身のように愛した存在が死に、この世界の本質に絶望し、剣を握れなくなったあの頃。それでも前に進む決意と共に、仲間を失わないために何もかもを犠牲にする誓いを立てたあの時。剣の代わりに盾を握り、再び踏み出したあの一歩。瞬間瞬間の記憶が怒涛のように脳裏を流れ、彼はその流れの中で翻弄されていた。指先まで冷え渡るような架空の冷気がミドリを襲った。物理的に彼を固定するものは何もなかったのに、彼は指一本動かせなくなっていた。
「ちょっと、大丈夫!? ねえ、ミドリってば!」
ぺちぺちと頬を叩かれる感触に、ミドリはようやく我に返って目を瞬かせた。彼が床から身を起こすと、シノンはようやくホッとして胸をなでおろした。
「俺は、一体……?」
「心配させないでよね……。いきなり椅子からひっくり返って倒れたのよ。ほんとびっくりしたわ。……何があったの?」
何があったのと聞かれても、ミドリ自身も自分の身に何が起こったのかよく分からなかった。
「俺も何がなんだか分からないんだが――いきなり誰かの感情が頭に流れ込んできたんだ。多分あれは……ミズキの脳に残っていた記憶だと思う」
「ミズキの、記憶……? でもミズキは前向性健忘で、少しの間しか記憶を維持できないって話だったはずじゃ?」
「ミズキの前向性健忘は『覚えてはいるが思い出せない』っていう感じだったはずだ。さっきシノンと話していた時に何かが引き金になったんだろう」
「ふーん……それで、一体なにを思い出したの?」
「それが……掴みどころがなくてよく分からない。後悔と絶望、それから強い決意が感じられたが、瞬間瞬間のミズキの感情が強く感じられただけだから、どういう記憶だったのかはっきりしない」
「後悔と絶望、決意……ねぇ。どんな決意?」
「誰かを守りぬく、決意。それも尋常じゃない強さだった。これは大げさに聞こえるかもしれないが――何を犠牲にしても、その行動が何に繋がるとしても……といったような。一体これはどういうことなんだ。意識である俺に単なる情報であるはずの記憶が介入してくるなんて、そんなことが――」
シノンが一瞬固まった。しかしミドリは自分の意識に流れ込んできたその記憶の断片が意味することを探しだそうと躍起になっていたため、シノンの不自然さには気付かなかった。
「ね、ねえ。ミドリってミズキをずっと見ていたんでしょ。その決意がSAOでのことなら、ミドリも何か知ってるんじゃない?」
シノンに尋ねられ、ミドリは泥
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