■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆自己の非同一性
第五十五話 シノンが目指すもの
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めて日が短いのでここまで上げるのには相当努力したことが伺える。その上射撃スキルはもうすぐ完全習得するレベルまで上げているのだから驚きだ。
「ずいぶん攻撃と命中に偏ってるな……。体術からは受け身系の防御MODが取れるから入れておくとローリングで回避するときに楽になるはずだ。落下ペナルティも軽減されるしな。武器防御スキルも上がってきてるだろう、そっちはどうしてる」
「武器防御はどれもあんまり魅力を感じないから何も取ってないわ。面倒くさくなっちゃって」
「それは良くない。とりあえず『防御時硬直時間短縮』と『押し返し』、『クーリングタイム還元』あたりは鉄壁だから入れておくべきだ。度胸があるなら『殺撃』を取っておくと役に立つ場面があるかもしれないぞ、そんな場面は無いことを願いたいが」
殺撃、という耳慣れない単語にシノンは首をかしげた。
「なんなの、殺撃って」
「剣だの槍だのの突き技を掴み取って柄で相手の顎を打ち砕く」
「うわっえぐい」
しかしシノンは迷わずその物騒なMODを取得することに決めた。
「ミドリはこの殺撃ってやつ使ったことあるの?」
「あるっちゃあるが滅多に使わないな。俺のみたいな回避系の盾はそもそも突き技に強いから殺撃を使うまでもないんだ。こういうのは軽装のシーフが取得しておくといざってときに役に立つ。例えばマルバあたりは結構頻繁に使ってたぞ。決まるとスタンするし非常に便利なんだが、こちらに向かってくる剣をじっと見極める必要があるから、ものすごく怖い。マルバも使う度にもう二度とやりたくないってぼやいていたな」
「それは逆にいいわね。向かってくる恐怖に打ち勝つ力が、私には必要」
『殺撃』のスキルMOD習得ボタンを押し込みながら、シノンはそう断言した。そんなシノンに対し、ミドリは以前よりずっと気になっていた質問をぶつけることにした。
「前から言おう言おうと思ってたんだが……お前さんは何故、そんなに前衛も後衛も完璧にやろうとしてるんだ? 盾は俺に任せとけばいいだろう。わざわざ敵の前に出る恐怖を味わわなくてもいいだろうに」
シノンはミドリの話を聞きながらウィンドウを操作していたが、その質問に対して指をピタリと止めた。しばらく硬直していたが、やがて力強い確信と共に導き出された答えは――
「強くなるため。私は強くならなければいけない。どんな恐怖にも一人で立ち向かって、それで傷つかない、強い心が私には必要なの。私の中に存在する弱い心……そのすべてを断片まで駆逐して、倒すべき恐怖の屍を積み上げ、そうして初めて私は本当の、理想の私を手に入れる――それが私が私自身に課した使命」
ミドリは目を丸くしてシノンを見つめた。彼が未だ見たことのないシノンの本性とも言うべき何かが、今彼の目の前にむき出しにされていた。ミドリはなんと言う
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