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藤村士郎が征く
第21話 川神姉妹堕つ(メンタル面が)
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での雫の挨拶すらも忘れて仕舞ったようだ。
 まぁ、現実逃避が重なり合った末に一時的の記憶の忘却であろうが。

 「忘れて仕舞ったのであれば、僭越ながらある程度簡略しつつ説明させていただきます。まずはですね、・・・・・と言う事なんですよ、一子。おや?大丈夫ですか?一子。顔色悪いようですが・・・」

 悪いのは顔色だけでは無かった、何だか体全体を小刻みに震わせる一子。

 「じゃ、じゃあ、し、士郎さ、さんも、す、既に知、っててるのの?」
 「勿論です。一子は考えていることが顔に出やすいですからね。若も承知済みですよ」

 その言葉に一子は「あわわわわわッわわわわわ―――――」と口元を震わせている。

 「ですが大丈夫ですよ、一子」
 「なっ、な、ななな何が?」
 「先ほど告げたように若も承知済みではありますが、一子に悪意が有って嘘をついていた訳では無い事も、一子のひた向きな努力の姿勢も承知していますから、嘘をついていた事についてちょっと説教されるだけで済みますよ」

 その雫の言葉に、一子は満面の笑顔の後に安堵の息を吐いた。

 「よ、よかったぁああ〜」
 「ですが・・!」
 「え!で、です、が・・!?」
 「放課後でも構いませんので、ちゃんと川神院の皆様には報告してくださいね?」

 普段はあまり感情を表に出さない雫から、満面の笑みで一子に対して言葉を紡いだ。
 ただし、瞳は全く笑っていなかったが。

 「イッ、イエッサ―――!!!」

 故に一子の反応は、とても大げさとは呼びにくいモノであっただろう。
 どこかのテレビからでも知識を掘り出したのか、実に綺麗な敬礼だった。
 しかし、雫の告げる無慈悲(現実)はもう一つ残されていた。

 「あー、あと最後にもう一つあります」
 「へ?」
 「一子は勘違いされている様なので言っておきますが、私たち雫とジャンヌと士郎(3人)の中で怒る度一番恐ろしいのは、私は勿論の事若でもありません」
 「・・・・・え?」

 一子は耳を疑った。以前一度だけ士郎に怒られた事が有ったが、あれ以上は無いのではないかと思えるほどの恐怖を一子は体験しているのだ。
 それが、目の前の雫は“否”と口にしていた。

 「えっと・・その・・ジャン・・・ヌ?」
 「ええ、お嬢様です。私は本気の絶対零度の微笑みをしているお嬢様を一度確かに目にしていますが、あれ以上はあり得ないと思いますよ?」
 「えっと・・その事と、今回の事はどう関係しているの?」

 何か嫌な予感を感じつつも、恐る恐る尋ねる一子。

 「お嬢様に至っては、一子は嘘をついているとは思っていません。そして、お嬢様は嘘があまりお嫌いです。ここまで言えばわかると思いますが・・って、一子!!?」


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