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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
45.無力対神意
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とと目、覚ませっつうの!!」

 両手で握りしめていた刀の刀身を一気に振り上げる。不死身の吸血鬼ならば刀に胴体を斬られた程度では死ぬことはない。だから躊躇なく彩斗は振り上げることができたのかもしれない。
 すると彩斗の手へととてつもない衝撃が襲いかかった。その正体は先ほどの水塊だ。衝撃で銀の刀が彩斗の手から宙へと吹き飛ばされた。武器を失った彩斗の勝機は無くなったも当然だ。彩斗は強大な魔力を持っているわけでもない。ただ少女の操る銀の刀が強かっただけだ。もはや結果など考えるまでもなく分かる。
 不死身の吸血鬼相手にただの人間が勝てないなど誰でもわかることだ。だが、心のどこかで何か勝機はあるのではないかと思う彩斗もいた。

「……人と同じ脆弱な肉体」

 無意識に溢れた言葉。吸血鬼の肉体は不死身であるがその肉体は人間と同じで脆弱なものだ。違うのは膨大な魔力の量と異常な再生能力だけだ。
 誰かが彩斗に教えている。これが真実ならば、彩斗でも不死身の吸血鬼を倒すことは可能となる。
 彩斗はわずかに口角をあげて、不敵な笑みを浮かべた。
 その瞬間だった。彩斗の顔面を狙うように水の弾丸が襲いかかってくる。
 それがなぜかわかっていたかのように彩斗は身を低く沈めた。弾丸は彩斗の頭上を通り過ぎていく。
 正直なことをいえば彩斗の身体は先ほどの手に水の塊を受けた時点で限界を迎えていた。それほどわずかな痛みであっても彩斗の身体は崩れ落ちるほどに疲労しきっていた。
 それでも彩斗は右手を握る。
 次にどんな攻撃が来るかはわからない。しかし次に来た攻撃を回避することなど考えている余裕などもうない。
 強く固められた拳を海原の顔面へとめがけて振り上げる。

「しっかり歯を食いしばりやがれ───」

 右の拳を包み込むじんわりとした感覚。それは魔力だ。
 前に唯から訊いたことがあった。普通の人間もごくわずかながら魔力が流れているものだ。
 彩斗の拳を覆っている魔力など目の前にいる吸血鬼(ばけもの)の魔力に比べたら足元にも及ばない脆弱な魔力だ。

「────このクソ野郎がッ!!」

 緒河彩斗の右の拳が、海原の顔面へと突き刺さった。
 ごく微量な魔力をまとっただけの力任せの全体重を乗せた強引な一撃。最も簡単な防御を破壊する渾身の一撃だ。
 海原の身体は宙を舞い乱暴に地面へと叩きつけられた。
 その一撃を最後に彩斗の身体から全ての力が抜ける。意識はその瞬間に暗闇の中へと引きずりこまれていくのだった。
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