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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
45.無力対神意
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を阻止するべく攻撃してきた。異世界からの召喚中に激突した不完全な梟は一瞬にして姿を消した。
それどころか一瞬にして消滅した“
真実を語る梟
(
アテーネ・オウル
)
”では突進の威力を殺すことができなかった。
一角獣
(
ユニコーン
)
は柚木と少女めがけて突進してくる。
もはや打つ手など一切なかった。回避することもできなければ受け止めることもできない。
せめて一瞬で死ねるように柚木は祈ることしかできなかった。せめて最後に柚木を守ってくれた少女を助けるために突き飛ばした。
時間がゆっくり流れる。記憶が逆再生されていく。これが走馬灯という現象なのだろうか。
そのどれもがここ最近の記憶ばかりだった。志乃や倉野木、そして彩斗とのことばかり。柚木にとっての幸せな記憶はこの半年だけだったのかもしれない。それでも本当に幸せだった。
せめてもの心残りは彼に気持ちを伝えられないことだけだった。
全ての覚悟を決め、柚木は静かに目を閉じた。
視界を失われたいま柚木は自らの死までの時間を明確に表すものはなくなった。とても長く感じる時ももう終わる。
「……なにやってんだよ」
誰かの声が聞こえた気がした。その声は柚木が会いたかった少年の声。しかしこの場に彼がいるわけがない。ついに幻聴まで聞こえた自分に呆れたその時だった。
大気を震わす獣の咆哮が響いた。咆哮というよりは痛みに耐えるような絶叫に近かった。
なぜ
一角獣
(
ユニコーン
)
がそんな声を上げるのか。
それに突進してくるまでの時間が長すぎる。
柚木はゆっくりと目を開ける。
「え…………?」
目を疑った。そんなことがあるわけがない。これは幻覚だろうか。
…………しかしそこには彼がいた。
黒の中に薄い茶色が混ざっている髪を靡かせ、その手には先ほどの少女が持っていた銀の刃を握りしめている。
「よっ! 柚木」
軽い返事とともに不器用な笑みを浮かべる少年。
緒河彩斗がそこにはいた。
「なんで……ここにいるの?」
柚木は呆然としながら彩斗に訊く。
そう言われるととても困ってしまう。なぜここにいるのかと言われれば柚木を助けに来たからだ。しかし彼女を目の前にそんなことを言えるほど彩斗は度胸はない。
「ま、まぁ……散歩かな?」
誤魔化す台詞としては全く出来の悪いことだ。柚木は一瞬唖然としたと思うと我に返って怒鳴りつける。
「なんでこんな危険な場所に来たの!?」
「それはこっちの台詞でもあんだよ! テメェこそ何してんだ、バカ!」
「バカはそっちでしょ!」
彩斗と柚木が言い争っている。すると誰かの叫びが響いた。それは先ほどの
一角獣
(
ユニコーン
)
の咆哮に酷似していた。
「なんだ……?」
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