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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
45.無力対神意
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梟は苦痛の声を上げながらも覆っている翼を解くことはしない。
「大丈夫、アテーネ!?」
小さな鳴き声とともに“
真実を語る梟
(
アテーネ・オウル
)
”は元の魔力へと姿を戻し、消滅した。
「────ッ!?」
思いもよらなかった光景に柚木は言葉を失った。この街の一帯の建物らは美鈴が従える五番目の眷獣、“
純愛なる白兎
(
アフロディテ・ダット
)
”によって霧化させられて質量を失っている。質量がなければ、いかなる攻撃の影響も受けないはずだった。しかし柚木の視界に映ったのは、霧化させられていた建物の窓ガラスは粉々になり、鉄骨がむき出し、所々えぐられているように消滅した部分さえあった。
この時改めて思い知らされることになる。“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”同士の戦いにおいては霧化など無意味なのだということ。
柚木はジリジリと接近してくる海原に合わせて後退する。
彼の目からは人らしさという感情が一切感じられない。これが眷獣に乗っ取られた吸血鬼の姿なんだ。自分もあのような状態になれば対等に戦うことができるのだろうか。その力で大切な人たちを守れるなら暴走してもいい気がしてしまう。
柚木は覚悟を決め、拳を固め、海原を睨みつけた。彼も自分の意思でこんなことをしているわけではない。ならば彼も救い出さなければならない。
「ぐあぁぁぁ───ッ!?」
海原が獣のような咆哮をするとともに空気中に散らばっていた水分が形を形成していく。それはクナイの形状へと変化し飛来してくる。ギリギリのところで回避し、次のモーションへと移行しようとした瞬間だった。目の前を覆い尽くすほどの水の塊が柚木へと襲いかかろうとしていた。
“
真実を語る梟
(
アテーネ・オウル
)
”は先ほどのダメージで現出させることはほぼ不可能。霧化された建物へ隠れることはできない。もはや柚木に回避する手段などなかった。
“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”から放たれた魔力は他の吸血鬼の眷獣たちの魔力とはわけが違う。吸血鬼の肉体を砕き、不老不死の肉体を持つ真祖さえも殺すことができる。中には“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”のことをこう呼ぶ者もいた。
───《真祖殺し》
そんな魔力の塊が肉体に直撃すれば、ただではすまないだろう。しかし今の柚木にあれほどの水塊を回避する手段はない。
柚木は少しでも負荷を軽減するために身体を縮める。この攻撃は前兆にすぎないのだから。確かに魔力によって高められた津波なら吸血鬼へと有効な手とはなるが致命傷とまではならない。せいぜい出来て足止めと大きな隙を作り出すことくらいだろう。
ならば考えられることは、次に強力な魔力攻撃がくるはずだ。今備えるべきはそちらだった。
だが、本当はこの先に何が起きるかも柚木にはわかっていた。
わずかに死を覚悟した柚木
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