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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
45.無力対神意
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った。
「この路地をまっすぐ抜ければ少しは安全な場所に出ると思う。そしたら多分ボクの仲間がキミを助けてくれるはずだから」
「あんたは?」
もう理解していたはずだった。しかし口から出たのは彼女への問いかけ。
「ボクは彼女を助けに行く。本当は戦闘への介入は禁止されてるんだけどね」
頭を掻きながら苦笑いを浮かべる少女。
少女はゆっくりと立ち上がり、刀を握り直した。
「キミの友達は絶対に助けるからね」
笑みを浮かべていた。その笑顔には恐怖の感情が見えた。彼女も怖いのだ。それでも恐怖を振り切って向かおうとしている。
止めたい。俺に任せておけ、と言ってやりたかった。
しかし、彩斗にあの場に行って戦えるような力もなければ、目の前の恐怖を振り切って行こうとしている少女を止めるような言葉もかけられなかった。
「それじゃあ、またどこかでね」
そう言い残して少女は路地から飛び出していった。
「ま…………て……」
そんな言葉にもならなかった言葉が暗闇に四散した。
闇夜には暗雲が立ちこめだした。今にでも雨が降ってもおかしくなかった。そんな下で二つの強大な魔力の塊がぶつかり合い大気を激しく震わせた。
その度に吹き飛ばされそうになるのを必死で堪えて、未鳥柚木は叫んだ。
「眼を覚ましてください、海原さん!!」
しかしその声は届くことはなかった。再び、凄まじい勢いで突進してきた
一角獣
(
ユニコーン
)
をギリギリのところで“
真実を語る梟
(
アテーネ・オウル
)
”が回避する。
どうすればいいのかがわからない。
“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”が従えし四番目の眷獣、“
海王の聖馬
(
ポセイドン・ユニコール
)
”を使役している青年、
海原界
(
うなばらかい
)
。彼をどのようにして止めればいいのかがわからない。
『柚木ちゃん、大丈夫!』
耳の通信機から女性の声が聞こえる。
「はい、なんとか大丈夫です。そっちはどうですか、美鈴さん?」
『こっちはアレイストさんが今、九番目と交戦中』
「……九番目」
最悪の展開だった。
九番目の眷獣、“
戦火の獅子
(
アレス・レグルス
)
”───“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”が従える中でも最高の破壊力を誇る眷獣だ。そんな化け物と戦えるのはアレイストしかいない。向こうの戦いが先に終わったとしても九番目を相手にした後に再び戦うのは無理であろう。美鈴は建物の霧化で手一杯。つまり加勢が来ることはまずないということだ。
一人の力だけで彼を止めることができるだろうか。
その時だった。アテーネが突如として咆哮し、柚木の身体を翼で覆った。それとほぼ同時に今までに轟音が響いた。膨大な熱が翼越しに柚木の肌へと伝わってくる。
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