暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
45.無力対神意
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「ちょ、ちょっとキミ!!」

 後方から聞こえる少女の制止の声を振り切って彩斗は非常階段へと駆け下りる。階段の一段一段などもはやどこを踏んでいるのかわからないほどに急いでいた。何度か段を踏み外したが手すりにすがりついてなんとか転倒を防ぐ。
 どうしてここまで走っているのだろうか。なぜまた危険な場所に向かおうとしているのだろうか。
 ……それは彼女のせいだ。
 先ほどまでは、誰かが彩斗をあの場所に行かせようとしていた。しかし今は違う。自らの意思であそこへと向かおうとしていた。

「……なんでだよ……なんでお前が……」

 呟いた。必死で考えるが答えは出ることはなかった。言葉にするがそれで答えが出るわけもない。
 後ろからは先ほどの少女の声と鉄の階段が靴とぶつかり合う音が連続して聞こえてくる。彼女も彩斗を追いかけて来ているようだ。
 しかし彼女を待っていられるほどの心の余裕などなかった。
 駆け下りた先にあったのは錠が破壊された扉だった。入ってくるときに急いでいたので閉めていなかったはずの扉が閉まっている。先ほどの津波の影響で閉められたのだろうか。
 その扉へ右肩から突っ込んで突き破った。身体は、突進の威力を残したままで道路へと侵入した。
 地面が濡れている。一歩踏み出すたびにベチャ、という水溜りを踏む不快な音とともにズボンの裾に水飛沫が飛ぶ。そんなことにまで気など回らないほどに彩斗は焦っていた。
 考えは未だまとまらない。ケンジュウの上に乗って同じケンジュウと戦うクラスメイトの姿。シシオウキカンの少女によれば、化け物(ケンジュウ)を操れるのは吸血鬼だけということだった。ならばなぜ柚木はあれを操れるのだろうか。それは彼女が人ならざる者であるということなのだろうか。
 多分、その疑問を本人から直接聞くために彩斗は彼女の元へと向かっているのだろう。

「…………ん?」

 その時だった。わずかな違和感に気付いた。
 あの場所へと近づくにつれて息苦しさを感じる。それは居心地が悪いのではなく文字通りの意味だ。
 息が苦しい。空気中に窒素と酸素、そしてわずかな二酸化炭素以外の何かが空気中に多く漂っているような感じだ。
 ───いや、違う。この感じは……

「まずい……ッ!!」

 彩斗は進行方向を反転し先ほど来た道へと変える。少女は予想外の行動に慌てている。そんな少女の手を握りしめ、走り出す。

「ちょ、どうしたの?」

 ───このままじゃまにあわねぇ。
 一か八か半ば飛び込むようにして少女とともに建物の間に飛び込んだ。それとほぼ同時にとてつもない轟音が大気を震わせた。轟音は膨大な熱量を撒き散らしながら辺りの建物を一瞬にして吹き飛ばしていく。反射的に少女に覆いかぶさるような形で倒れこんだ彩斗の背
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