第百八十七話 舞い乱れる鳥その十一
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「そうなるわ」
「では織田信長の言う通り」
「備前はですか」
「夜襲を退けたからこそ」
「これで」
「織田家のものとなる」
まさにだ、そうなるというのだ。
「美作も因幡もな」
「そうなりますか」
「一気に」
「そしてじゃ」
それに加えて、というのだ。
「備前の宇喜多家もじゃ」
「あの家もですか」
「その中で」
「もう決めておるわ」
どうするかということを、というのだ。
「既にな」
「ではあの家も」
「織田家になびきますか」
「宇喜多直家も」
「あの者も」
家臣達は宇喜多家の主であるこの者の名前も出した。
「そうしますか」
「織田家につき」
「そして」
「織田家にはつくがな」
宇喜多直家は、というのだ、彼は。
「しかし殿に対してはじゃ」
「織田信長には」
「どうすると」
「何もせぬわ」
そうはしないというのだ。
「全くな」
「あの者がですか」
「何もしないのですか」
「あの謀を得手とする者が」
「我等以上にそちらを得手とする者が」
「決して」
「うむ、せぬ」
全く、というのだ。
「それはない」
「あの宇喜多直家がですか」
「それをせぬのですか」
「謀により織田信長を害せぬ」
「そうすると」
「そうじゃ、絶対にない」
どう間違えてもというのだ。
「あの御仁はのう」
「それは何故でしょうか」
家臣の一人が怪訝な顔で松永に問うた。
「あの御仁が謀を仕掛けぬ訳は」
「する必要がないからじゃ」
「必要がですか」
「そうじゃ、ないからじゃ」
それでだというのだ。
「全くのう」
「必要がないとは」
「それは」
「あの御仁は家を守りたいのじゃ」
それ故にというのだ。
「それだけだからじゃ」
「ではあの数々の策謀も」
「それも」
ここで家臣達は気付いた、宇喜多のそのことに。
「全てですか」
「家の為だったのですか」
「宇喜多の家を守る為に」
「その為に」
「そうだったのじゃ」
松永は極めて冷静に話す。
「その為にあえてな」
「悪人となっていた」
「左様ですか」
「殿ならおわかりになられる」
信長なら、というのだ。
「あの御仁のことがな」
「またですか」
「そう仰るのですか」
「織田信長なら、と」
「しかも殿とまでお呼びして」
家臣達はここでも松永が信長のことを高く評価するのを聞いて眉を顰めさせた、そのうえでこう言うのだ。
「あの男は我等の敵です」
「それに他なりませぬ」
「その男をそこまで買われるとは」
「何故ですか」
「ははは、どうにものう」
また笑って言う松永だった。
「この数年楽しくて仕方がないのじゃ」
「織田家にいて」
「それで」
「無性にな。それでな」
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