第3ヶ条
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
今日は水曜日。これまでなら週の中間で何か意欲が出なかったこの日が今は待ち遠しい。俺は放課後のチャイムが鳴る頃、学校の図書室をウキウキしながら出た。
そして、大きな声を出しながら走る野球部を尻目に、グラウンドの横を少し駆け足で抜ける。高校の正門とは真反対にある裏門をくぐると、そこにはピシッとした姿勢で立つ美山さんがいた。
「今日は美山さんのほうが早かったかあ。待たせてごめんね。」
俺が謝ると、美山さんは少し微笑みながら首を横に振った。
「いやいや。この前は私が待たせちゃったし、今日こそは先に着こうと思って美術室早めに出てきちゃったの。」
そう言いながら微笑む美山さんに少し見とれてしまった。普段は凛々しい顔をしているのに笑うと凄く可愛いんだよなあ。やばい、絶対に今表情が崩壊している。
俺は心の中で小さく「よしっ」と気合を入れて歩き始めた。美山さんもついてくる。
そう、俺は美山さんと付き合うようになってから一緒に帰るようになった。学校ではなかなか喋る機会がない分、この帰り道は美山さんに近づける最高の時間なんです、はい。
とはいっても、相変わらず美山さんは俺の少し後ろを歩く。隣で一緒に並んで歩くのが最近のカップルたちの潮流だと美山さんに教え込んだ俺の努力の甲斐もあり、その距離は半歩後ろまで縮まったが、それ以上近づくのは美山さんの美徳が許さないらしい。
ちょっと変わっている?いやいや、それでも美山さんと付き合っているんだよ。それでいいんだよ。直感的に可愛いと思えた女の子と付き合えているんだ。俺は幸せ者だ。
俺は意味不明のテンションになりながら心の中でガッツポーズを繰り出す。
「伊笠君、どうかしたの。」
さすがに様子がおかしかったようだ。美山さんが不思議そうな表情を浮かべながら尋ねてきた。
「いやいや、なんでもないよ。」
俺は慌てて何事もないことをアピールする。それでも美山さんはキョトンとした表情をしているので、大きく話を変えるべく新たな話題を切り出す。
「美山さんの好きな音楽とかって何かあるかなあ?」
「音楽?…音楽かあ。」
美山さんは少し悩んだ顔をした。
我ながら何を聞いているんだとも思うが、今はこれでいいのだ。美山さんの好きなものについて1つでも多く知りたい。
しばらく、「うーん」と唸るように悩んでいた美山さんの表情が急にパッと明るくなった。
「オ、オサキとかよく聞いてるかな。」
美山さんはその後、小声で「知ってる?」って首を軽くかしげながら聞いてきた。…可愛い。じゃなくて、返事だ返事。
「オサキってもしかしてオサキユタカ?」
美山さんはコクコクと頷く。…可愛い。じゃなくて、俺は何度同じ過ちを繰り
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ