第5話 巡り合わせ
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も、居心地の悪さが抜けないんだろう。
「おーっす、謙之介!今日もまた目つきが悪いなぁ!」
「……朝の挨拶で言う事かそれ?そもそも褒めてないし」
周囲に人が居らずドーナツのような空間を形作っている小倉の、そのドーナツを破壊してきたのは、今日も実に快活な田中だった。小倉を避けている周囲の生徒の雰囲気など何のその、この男には対人コミュニケーションの壁などという概念は存在しないのかと思わせられる。それにしても、よく自分なんかにここまで構うものだ。こいつ実は友達少ないんじゃないか?
「……で、お前の後ろの彼は何者?どっかで拾ってきたのか?」
「バカ、犬か何かみたいに言うなよ!お前に会いたいっていうから、連れてきたんだよ」
田中の後ろには、坊主頭で丸顔、田中より背の高い均整のとれた体格をした男子生徒が立っていた。顔は黒く日焼けしており、その手にはいくつかテーピングが巻かれているのが小倉には確認できた。
「C組の保坂良輔。野球部の現キャプテンで、2年からエースで4番を張ってる、割と凄いy…」
「おい、やめろ、勝手に能書き言うのはよせ」
高らかに他己紹介を始める田中を、保坂は慌てて制した。田中は「えぇー褒めてるんだから良いだろー」と口を尖らせたが、保坂は「そういう問題じゃない」と頭を小突いた。
「……で、エースで4番でキャプテンの保坂くんは、転校早々暴力沙汰を起こした俺みたいな不良少年にどういった用件があるの?」
保坂と田中の絡みを白けた目で見ていた小倉に、保坂の目が向いた。小倉の顔を保坂はジッと見る。あんまりジッと見てくるから、小倉の方が気恥ずかしくなってくるくらいだった。なんだ、こいつ、ホモか何かか?俺に惚れちゃったのか?
「……やっぱり。お前、東福山レッドスターズの小倉だろ?」
「え?なになにそれカッコいい!何かの戦隊?」
「中学時代の、硬式野球のクラブチームの名前だよ。東福山レッドスターズは県外のチームで、中3の5月の遠征の時、俺、こいつと対戦した事あるんだ」
田中の茶々に対して、保坂は丁寧に説明した。小倉は記憶を辿りながら、首を傾げた。はて、中3の5月?こんな奴とやったっけ?小倉は全く思い出せなかった。2年も前の話だから、相手チームの人間の顔を全て覚えていられるはずはないのだが。
「青葉南ボーイズとやったの、覚えてないか?」
「いや、マジで分からん。割と必死に思い出そうとしたが分からん」
「そうかー。俺はバッチリ覚えてるんだけどなー。」
キョトンとしている小倉の様子に、保坂はがっかりした。田中はといえば、何故か妙にテンションが上がっている。元々テンションは高めな男だけれど。
「へー、謙之介野球やってたんだ!それならそうと言
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