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青い春を生きる君たちへ
第5話 巡り合わせ
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ずりあって、そいつらへの対応がお留守になっちゃ、普段からクズを横目にしてるにも関わらず、ルールを律儀に守ってる連中が浮かばれないだろ。真面目にしてても、良いことなんて何もないって思ってしまう。クズがクズのまま成長するより、そっちの方が問題だ。普通の連中が、ルールを信じられなくなってしまう事の方が。」


葉鳥の考えは、もっともな事のように小倉には聞こえた。ただ、少数のクズは一体どこに向かうのか、という疑問は残るが。恐らく、そんな連中の事は、物好き以外は誰も省みないのだろう。誰にも省みられないまま、どこまでも黒く濁って、いつか他人や自分の身を滅ぼす。


「最大多数の、最大幸福でしたっけ?シビアですね、結構」
「……少数派に優しい世界の方が、珍しいんだぜ?」


窓の外で、百舌鳥の高鳴きが聞こえる。季節はだんだん、涼しさを増していた。




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「……ねえ、転校早々謹慎なった不良って、あれ?」
「見た目には大人しそうなのにねえ……人は見かけによらないねえ」


小倉は、自分の方に向いた視線にも、自分の事を語る小さな声にも気づいていた。噂話をされること、後ろ指差される事を気に病むような繊細な心の持ち主だったら、そもそも喧嘩騒ぎなど起こさない訳で、小倉も図々しいくらいに堂々とはしていたが、モブキャラを装って、じっくり周囲を観察するような真似が難しくなったのだけは残念だった。小倉は今や、見返されるようになっていた。それも、畏怖のこもった目で。


「……でさー!そこで言った訳ね!100円くらいで細い事言うなっ……て……」


教室の後ろ側で、同じようなDQNの男女相手に、いつものように悪行を自慢していた瀬尾は、小倉の視線に気づくと一気にトーンダウンした。自分の彼氏がいとも簡単に小倉に蹂躙され、自分の強い立場の確証が揺らいだ瀬尾は、これまで以上につまらない力のアピールを増やすようになり、そして小倉に対してはかなり卑屈な態度をとるようになっていた。小倉は、瀬尾から注がれる憎悪の視線に気づいてはいた。しかし、その度見返してやると、瀬尾はギクッとして、視線を明後日の方向に逸らすのだった。

俺が見返されるようになったのと同じく、こいつも、自分を見返す奴の存在に少しは気づいたってことか。小倉は考える。格好だけで他人を騙し、自分を騙し、そして土台の無い高みに登った。高みからは、見返す者の視線を気にせずに、一方的に見ることができたのだろう。見て、評価し、悪し様に罵る事ができた。しかし、その高みの土台がない事を思い知らされ、自分もまた、見られていた事に気づいた。見られて、評価されていた事に気づいた。ずっと一方的に見ていたもんだから、今更、見られていた事に気づいて
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