Act_0 《Hello World》
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、現実へと引き戻されていく
「アンタ、そんな戦い方していると──死ぬぞ」
黒い剣士は、アスナへ振り返ること無く告げた
此方へ視線を移すことは無いが、目前へ迫る《コボルト》を切り伏せる速度は変わらない
──余計な、ことをッ!
「どうせ、みんな死ぬのよ!!」
悲痛な叫びが、その場に木霊する
キリトは、その声を背中で受けながら
アキラは、その声に耳を傾けながら
お互い、ただその次に続く言葉を待つだけだった
「戦い抜いたその先で、せめて満足して死なせてよ──ッ」
満足して死にたい、と
その言葉に──
キリトは同情の面持ちを浮かべ、逆にアキラは表情を変えることは無い
死を鼻先へ向けられた今、何かを成して死を選ぼうとする者は必ず居た
それらと同じだ、彼女も
ふいに、アスナの身体を強い衝撃が襲った
先程までアスナが居た場所には《コボルト》が刃を大きく減り込ませている
瞬き1つ分でも遅ければ、彼女は今頃あの刃の前に平伏していた事だったろう
──でも、お腹の辺り、凄く痛い
それもその筈である
《コボルト》がキリトの防衛線を突破した一瞬の合間を、アキラは見逃さなかった
自身の持てる脚力を総動員し、弾き飛んだ矢のようにアスナへと向かって突っ込んだのだ
その分、アスナにも大きなダメージはあったようだが、命があれば儲けものだ
腕の中で、だんだんと意識を失くしていくアスナに意識を一瞬だけ向け、彼女を抱えたアキラは、隠すことも無く舌打ちをした
周りを囲まれたこの状況で人を抱えて逃げ出すのは正直厳しいものがある
先程からぐったりと項垂れる腕の中の存在
それが生きている事は、何と無く分かる
数日間の間に及ぶ迷宮内での戦闘による過労
キャパを超えたオーバーワークは、彼女の体調に大きなペナルティを科している
だが、静かにしている分には好都合だ
これ以上邪魔をされては、正直《コボルト》よりも鬱陶しい障害にしかならない
アキラはアスナをキリトへと放り投げると、《コボルト》の群れへと向き直った
「彼女を迷宮から出せ、邪魔になる」
「そっちはどうする!? 此処に残るのかっ!」
キリトからの問いを背中で受けながら、アキラは群れとキリトたちを分ける巨大な扉へと手をかけた
ギギギ、と鈍い音を立てながら閉まろうとする扉の隙間から、アキラは先へ進むようにハンドサインを送る
一瞬躊躇いを見せたが、キリトはそれ以上何か言葉を発すること無く、アスナを抱えてその扉へと走りこむ
その靴音を聞きながら、安心したように、アキラは大きく息を吐く
が、問題が解決している訳ではない
ピッタリと閉まった扉の向こうに、キリトたちを逃がす事は成功した
が、壁を背にした此方を囲むように周囲
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