第1章 群像のフーガ 2022/11
6話 獣人の王
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ョンを経て、ボスの行動は曲刀による攻撃へと移行するらしい。気にはなるものの恐らく触れずに終わるであろう相手の観察を長々と続けても仕方がない。
コボルド王が放った斧の振り下ろしと、壁役部隊であるA隊のリーダーの分厚いヒーターシールドが衝突し、甲高い音が鳴り響く。そして、音を合図に左右の壁の高い位置に開いた無数の穴から三匹のコボルドが飛び出した。金属鎧に長柄斧、こいつが《ルインコボルド・センチネル》か。
「わかっとるよな。わいらはボスを攻撃するための大事な戦力やぞ」
乱戦するエリアからやや後方、オミソパーティーと並ぶE隊リーダーのキバオウは恫喝するような低い声音で告げる。本来ならば相手にするはずだった取り巻きが現れても一向に動こうとせず、彼らの支援役であるG隊もまたキバオウの統治下にあることから同様に静観の構えをとる。つまり、彼等から一切の手助けはないものと考えた方が無難だろう。それどころか、かすり傷でも付こうものなら鬼の首を取ったような態度で糾弾されそうなものである。幸か不幸かはさておき、キリトの予想が見事的中したわけだ。
「キリト、こっちが二匹受け持つ。そっちは確実に一匹仕留めてくれ」
「そんなこと、できるのか?」
「防具の性能的にも持ち堪えるならそっちより向いてるはずだ。それに、ヒヨリにはスイッチからの一撃離脱しかさせる気はない。安全第一は遵守する」
「………わかった。俺達も手が空き次第援護に向かう」
《ルインコボルド・センチネル》に向かって駆けるキリトとアスナを見送り、ヒヨリには後ろに控えているように指示を出す。俺が率先して敵の敵愾心を引き寄せつつ攻撃、隙や死角を突くようにしてヒヨリがクリティカルを叩き込むシステムこそが、俺達の基本戦術だ。当然、今までは無理のないように一匹ずつ相手にしていたもので、二匹同時に相手取るなど今回この舞台でぶっつけ本番の大勝負である。この四週間で培われたヒヨリの経験値――数値的なものではない、プレイヤー自身のスキル――を疑うわけではないが、それでも不安は残る。そのため、多少負担は掛かるかも知れないが、俺ができる限りモンスターにダメージを与えればリスクを減らすこととした。若しくは、この場で自分のスペックを知っておきたかったのかも知れないが、事の真偽は触れないでおくことにする。
「俺達もやるぞ」
「うん!」
頷くヒヨリから視線を離し、重武装コボルド目掛けて拾っておいた石――これでも立派な投擲武器扱いだが、攻撃力は泣けるほど低い――を投げつける。投剣スキル二連技《ツインスワロー》によって放たれた二つの礫は軽い音を立てて兜に命中。直後、石ころがやっと与えた雀の涙ほどのダ
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