第1章 群像のフーガ 2022/11
6話 獣人の王
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の長柄斧にカウンターを撃ち込むから、すかさずスイッチで飛び込んでくれ」
説明が終わると、ディアベルはAからGまでのPTを整列させ終えていた。こちらに声が掛からなかったのは別段咎める気もないが、取り巻き殲滅を押し付けておきながら添え物程度にも扱わないという立ち位置は少々考えさせられる。余りの二名と会議不参加者の集まりとはいえ、ぞんざいなものだ。
「邪魔にならなければ好きにしてろってことか。この様子じゃ俺達、露払い役としても期待されていないかもな」
「そうなら気は楽なんだろうけど、外様なだけに適当な仕事をしたら後でお小言を貰いそうだ」
「だとしたら、出し惜しみはナシだ。あんな奴等と組むのは癪だが、初のボス戦、本気でやらせてもらうとしようじゃないか」
「………ああ、全力でいこう」
ディアベルが大扉を開くのを眺める間、キリトと言葉を交わす。このPTだけが唯一の良心だ。むしろ他のPTでなくて良かった。最後に指貫グローブにしっかりと手をはめ込み、愛剣を抜く。ヒヨリに視線を向けると、頷いて返される。準備は万端ということだろう。
やがて大扉は完全に開かれ、これから戦場となる室内が露となる。奥に伸びる長方形の部屋はどこかの室内競技場を思わせるような広い構造で、ヒヨリもそうだが、層を移動する手段は専ら街の転移門だけしか潜ったことのない俺には実に新鮮な光景だった。それに隠しダンジョンの奥にいるボスモンスターは総じて小型のものであり、部屋もこじんまりとした広さなのに対して、こちらは明らかに大きい。やはり想定された戦闘の形態の差なのだろうか。
取り止めのない思考を巡らせるうちに、暗かったボス部屋の左右に松明の火が次々に灯されてゆく。光源の発生が奥へ奥へと進むうち、ひび割れた石床や壁が、至る箇所に飾られた大小様々な髑髏が、最奥の玉座にて坐する何者かのシルエットが、その全てが照らし出される。
先陣に立つ騎士の長剣が振り下ろされ、それを合図に総勢四十六名からなるフロアボス攻略部隊は戦場へと雪崩れ込んだ。前線部隊が玉座までおよそ二十メートルという距離まで到達すると、コボルドの王が玉座から跳び、空中で一回転した後に地響きを起こしながら着地。獣のそれである咢が開かれ、咆哮が響いた。
巨大な体躯だ。ヒヨリと相手をした《ルインコボルド・ブラッドリッカー》よりも更に頭二つは突き出たような背丈。骨から削り出した斧と、革を貼り合わせたバックラー。腰に差した得物は、各所の情報からするとヒヨリの身長くらいの湾刀らしい。攻撃範囲は広そうだが、《曲刀》のソードスキルは既に知れ渡ったもので対策は万全と言って差し支えはなさそうだ。四本あるHPゲージが最後の一本になった際に、斧と盾を放り投げて腰の得物を抜き放つ無敵モーシ
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