第1章 群像のフーガ 2022/11
6話 獣人の王
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役割変更についての報告だった。
………そう、キバオウ率いるE隊と、その支援役だったG隊が取り巻き殲滅部隊から前線の控え部隊へと変更され、それに伴って人数の増加を理由にオミソパーティーにはE隊G隊が受け持っていた雑魚殲滅を一手に押し付けられたのである。突然の事例に抗議を申し出るも、まともに取り合ってはもらえなかった。
『雑魚が怖いんなら抜けてもええんやで?』というのが、この配置転換をディアベルに進言したキバオウ本人の言葉である。これがボス攻略でなくて、キリトとヒヨリの両名にに宥められていなければ、今頃はSAO正式サービス初の《殺人者》になっていたかも知れない。
出発を目前に控えていきなりの配置転換を想像していたプレイヤー達はざわめき出すものの、対岸の火事だと知るや否や再び雑談やら騎士様を囃し始めるやらで、とても彼等に命を預けられるようには思えなかった。ただ、壁部隊であるB隊リーダーのエギル――――記憶が確かなら、第一回のボス攻略会議でキバオウと対峙した黒人男性だったか――――と、数名がこちらに気遣わしげな視線を送ってくるも、俺はやや挑発的に視線を逸らす。どうせ助けてもらえないならば、下手な同情は無用の長物である。そんなもので喜べるほど馬鹿じゃない。だが、アルゴとの約束もある手前で投げ出すわけにもいかず、キリトとの合意で渋々ながら引き受ける事と相成った。
その後、騎士様の雄弁な演説でより一層士気を増したレイド――――オミソパーティーを除く――――はフィールドを進み、迷宮区を突破して、怪物のレリーフの刻まれた巨大な二枚扉の前まで辿り着いた。
幾度か遭遇したモンスターからの襲撃も俺達の出る幕はないとばかりに速やかに処理されてしまい、消耗と呼べるほどの事もなかったのである。それらが起因してか、レイド内の空気が異様に軽く思える。
道中はそれこそ遠足か何かのような浮ついた空気で、これから死線を潜ろうという危機感が全く感じられなかったのだ。フロアボス戦を経験しなかった俺が異端なのかもしれないが、これから向かう場所の危険度と彼等の心構えが全く合致していない気がした。今でこそボス部屋前だから静かなものの、脳裏に一抹の不安を残してしまう。
「………ちょっといいか」
キリトの小声の呼びかけで、同PTに属する全員が集まる。
「今日の戦闘で俺達が相手する《ルインコボルド・センチネル》は、ボス取り巻きの雑魚扱いだけど充分に強敵だ。頭と胴体の大部分を金属鎧でがっちり守ってるから、二人の《リニアー》もただ撃ったんじゃ徹らない」
ヒヨリとアスナも、それに頷いて答える。
「解ってる。貫けるのは喉元一点だけ、でしょ?」
「スイッチをやるんだよね?」
「そうだ。俺達が奴等
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