Cross Road 〜運命の交点〜 (五月)
第一章 風の導を辿り往き
プロローグ 姫君とナイトと和菓子屋さん(1)
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って頂けるとありがたいですわね。わたくしも今年一年が幸せすぎたせいで、来年以降のクラス替えなどでの運さえも、使い果たしてしまったのではないかと心配でして。」
そうおどけて見せる京花さんがあたしにアイコンタクトで謝りながら、空気を和ませてくれた。
「そうです。いつの間にか、中等部からご一緒しているような気がしていましたわ」
そう感慨深くため息混じりに行ってくれる友達に、あたしは涙腺が緩みそうになっていた。
「そうですわ薫子さん、お別れ会なんて称しましてお花見になんて参りませんか?」
京花さんにそう言われたのが今日の出来事の発端だった。
「へぇ、面白そうじゃない。それじゃぁみんなも誘ってわいわいやろうよ」
8:42:19
駅の電光掲示板にぱっと目をやると、ご丁寧に秒まで表示してくれていた。
何だってこの駅は今が何秒であるかまで見せつけてくれているのだろうか。
自分への苛立たしさがどんどん高まっていく一方の駅前から、あたしは足早に遠のく。
何だってこんなことになっているのか、その理由は自分としてもすっごい恥ずかしい。
奏お姉さまは演劇部の講習会があるらしく、その関係で朝早くから出かけることになっていた上に、初音については昨日から由香里さまの家でやっかいに成っていた。
つまり今朝、寮の中にはあたし一人しか居ないのだ。
何を意味するのかと言うと、あたしは自分で起きなければならなかったのだ。
うん、何ら普通のことだって自覚はしている。
でもそれができるかどうかは、早起きという苦役を日常的に、それも難なくできる人間と、多大なる努力が必要な人間に分かれるとあたしは確信している。
そんな屁理屈をこねてみたところで、本当は分かってる。
誰しも自力で起きなければならないというのに、あたしは毎日奏お姉さまに起こされていて、しかもそれが日常に成っていたのだ。
朝起きたときには目覚ましが壁に投げつけられたせいで見事に壊れ、恐らく本棚にぶつかったせいか、本も幾ばくか地面に崩れ落ち部屋は惨たる様子を示していた。
もちろんあたしが寝ぼけて目覚ましを無意識で投げたのだろう。
ともかく目覚ましを壊していたせいで、あたしは起きようと思っていた時間よりも遅れて目が覚めてしまったのだと思いこみ、そのまま最低限の身だしなみだけは整えて寮を出たのだった……
そして早く着きすぎて時間を持て余しているという今現在に至る。
実際、あたし自身が起きようと思っていた時間よりもかなり早めに目覚ましを合わせていたことついぞ忘れて、きちんと自分の携帯なり寮のリビングに置かれている時計なりで正確な時間を確認すればこんなことには成らなかったはずだ。
「そりゃ大は小を兼ねるとか、少し早めに行動しましょうとか、そんな類で言うなら褒
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