2話 ギルドは平常運転
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オレンジ色をした楕円形の大きな扉。これを開くと、そこに広がるのは真昼間からビールを飲みつつ、喧嘩騒ぎをしているいい歳をした大人達。掲示板に張られた依頼をチェックしているのは、何がしたいのか、四六時中そこにいるナブ・ラサロという男性を除くと、2人しかいません。魔導士を数百人規模で抱える巨大ギルドとして見ると、異常な程に少ないのです。仕事をしない駄目な大人が多いものですね。
ギルド建物に入ってきた人物など、露程も気にする様子はありません。残念ながら、妖精の尻尾(フェアリーテイル)は今日も平常運転です。このお気楽具合は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の特色と言えるでしょう。
私は数少ない適当に空いている席へ座り、ポーチの中から数冊の本を取り出します。態々、ギルドにやって来ましたが、特にやることがあるという訳でもありません。いつものように、本を読んでいるだけ。どうせ本を読むのであれば、静かな場所でゆっくりと読みたいものです。
しかし、ギルドは街の大通りにあるため書店が近いだけでなく、ギルドのメンバーに私と同じく読書が趣味という方も何人かいるため、そういった人達と本の貸し借りや意見交換が出来る利点があるのです。これ等の利点のためならば、五月蝿さもBGMに変えてみせます。
私はポーチに常備している耳栓を取り出しました。
◆
暫く本を読んでいると、問題児筆頭のナツ・ドラグニルが帰ってきたようです。耳栓をしていても、少しだけ響く声と熱気、間違いありません。
彼は昨日から漁業で栄える港町、ハルジオンまで行っていました。メンバーからイグニールらしき目撃情報があったと聞いたため、それを確認しに行ったようですが、イグニールは竜です。
竜が私の思い描く竜、つまり、鋭い爪と牙を持ち、翼をそなえ、空を飛ぶ、しばしば口からブレスを吐くという、巨大な蛇のような怪物であるならば、目撃情報が出た時点で町は大混乱、評議員からは急遽討伐討伐部隊が編成され、各ギルドには半ば受注が義務付けられた緊急依頼が届けられると思います。大方、魔導士の二つ名か何かでしょう。
彼に、その目撃情報とやらを渡した人物は、その情報が人のものだと知りつつ渡したのでしょう。ナツ・ドラグニルという人物は頭が悪い訳では無いのですが、少々、頭の螺子が緩んでいるため、からかうと面白いのです。
そんなことを考えているもつかの間、耳栓越しに聞こえる罵声の数々。成果の無かったナツ・ドラグニルが暴れ、それに周りが便乗。魔力が感知出来ることから、魔法も使った大喧嘩となっているようです。早めに遠くへ避難しておいた方が良いでしょうね。被害に遭うのは御免です。
私がのそのそと移動の準備をしていると、一際大きな音が聞こえたと思うと急に静かになり、魔力も感じられなくなりまし
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