暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
悪意が装飾された場所で、操り人形は華麗に踊り狂う
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ば話は別だ。大河内は他のメンバーに目で合図を出した。そして自分から飛び込み前転しながら敵の死角に入る。道が曲線になっていたのが幸いして、体力をそこまで消費する事なく隠れる事が出来た。
大河内はすぐに手持ちの拳銃で敵の方向に向かって発砲する。そこで敵がこちらに走っている事を知り、牽制は成功だったと安堵した。
同じ道に立ちながらも、互いに相手の姿を視認出来ていない。こんな特殊な状況下で先手を打つにはどうすれば良いのか。仲間が指示を仰ぐ視線を大河内に送る中で、彼はボソッと呟いた。
「法城、僕らは囮だ。その間に他の3人は簡易射撃武装で敵を仕留めてくれ」
「え、まっ……」
「変更はない」
そう言ったが早く、大河内はゴミ置き場へ再び飛び込み前転。そして、うなじが地面に着いた辺りで拳銃を敵に振りかざしてトリガーを引いた。もちろん彼は流れに乗って防壁の元へ辿り着く。
――敵は見えない、か。
煉瓦
(
れんが
)
で出来た小さな防弾に背を預けながら、彼は転がっているコンマ秒の間だけ見据えた先について結論を出した。相手もサプレッサーを取り付けているらしく、銃声は小さい。しかし、自分を狙う殺意の塊は目では追えない速さを持って煉瓦に突撃してくる。砕けた破片が頭から落ちてきて鬱陶しい。
そこで法城も同じ手順でこちらに戻ってきた。彼は分かりやすく息を吐くとこう言った。
「あいつら動いてない。きっと俺らを警戒してるんだよ」
「よし」
よほど慎重なまとめ役でもいるのか。とはいえ、相手にしているのはロシアからやってきたプロの中のプロだ。荒唐無稽なやり方でこちらを圧倒してくる可能性は否めないだろう。
大河内は相手の銃声が一瞬だけ止んだのをチャンスに、顔を出して敵に向かって銃弾を放り込んだ。相手が自分達を正確に捉えていないように、大河内も確実に敵を把握出来てはいない。それでも路上に浮かぶ人影らしきものを信じて狙い撃つ。するとそちらの方から呻き声が聞こえた気がした。
そのとき「リーダー」と呼ぶ声が少し遠い位置から聞こえてきた。敵を確実に排除するための狙撃班達だ。どうやら準備が整ったらしい。
彼らが銃身を改造した銃を手に取っているのを見て、大河内は手で合図を出した。人差し指を真上に立て、それから指を拳銃の形に変えたサイン。それを受け取った彼らも、横でそれを見ていた法城も少し驚いた顔をした。
「……正面突破?大河内、それはいくらなんでも……」
「強敵だからって出し惜しみは許されないんだ。ここである程度の数を奪ってしまえばこっちのもんだろ?」
そのとき、大河内はひどく朗らかな顔をしていた。
まるで全てが自分の思い通りに行っている事実にホッとしているかのように。
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