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横浜事変-the mixing black&white-
法城は恥ずかしがる様子もなく、長々と哲学を語った
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も発さない。モヒカンが最期を遂げた以上、相槌を打ってくれる人間はゼロそのものだった。

 「……それが今までの展開だった。だがそれは、今回の事件をもってあっさり覆されちまった。最初はロックバンドを護るだけだと呑気に構えていたさ。その時点で敵が俺らに喧嘩売ってるなんて想像もしなかったよ。なにせ、この街の裏側に生きる連中は俺らに手出しできなかったんだからさ」

 「……」

 「この事件はもしかしたら未然に防げたものだったかもしれない。それでも起こっちまったのは、一端に俺らの警戒が怠っていた部分もあったんだろうな」


 「まったく、慣れってのは怖いね」

*****

 大河内らチームCがいるのは、右手側に女学院の校舎裏が見える住宅街の小道だ。車一台が通れそうなくねくねした道だった。
直線でないのが敵からの攻撃の判断を鈍らせ、街灯は点滅を繰り返すばかりで役に立たない。彼らの足元は、月明かりでは庇い切れないほどの漆黒の海が流れ、電柱や外壁を頼りに歩くしかなかった。

 ヘヴンヴォイスが逃げた道を走っていたら、いつの間にかこんな謎めいた道に出てきていた。それが彼らの狙い通りなのか、本当に見失ってしまっただけなのかは分からなかった。

 大河内は携帯で本部に連絡を取った。しかし電話に応じた高橋が口にした言葉は非常に違和感を抱えたものだった。

 『敵は近くにいます。今いる場所で待機し、銃声が聞こえ次第戦闘を続行してください』

 それっきり、彼が電話に応答する事はなかった。大河内は自分達がとても危険な何かに巻き込まれているのを悟ったが、時すでに遅く、引き返せる状態ではない。

 大河内は携帯のライトで足元を照らし、近くにゴミ収集所があるのを確認する。後ろから着いて来ている法城達を呼び寄せ、そこに(まと)まる事にした。

 「なんかこれじゃ、俺達が本当に街のゴミって感じじゃん」

 法城が自嘲じみた言葉を吐き出したが、大河内はそれを黙殺した。そして数分前の高橋が放った言葉の意味を解釈しようと試みる。

 まずおかしいのは、待機するという点だ。本部はこちらの状況を把握している。殺し屋チームが明らかに危なげな地帯に足を踏み込んでいる事を知っているのだ。それなのに『動くな』と指示を飛ばすのは、なかなかに狂っているとしか思えない。

 そして誰が聞いても変だと思えるのは、『銃声が聞こえ次第』という部分だった。自分達についてネットを通じ、感覚的にしか読み取っていない彼らが、どうしてそんな詳しい事を予測出来るのか。もしかしたらいきなり襲いかかってくるかもしれないし、火炎放射器で焼かれる可能性だってあるかもしれないのに。

 ――あからさますぎるのが、逆に僕たちに不安を煽がせてるのか?そんなことに一体何の意味が
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