第1章 群像のフーガ 2022/11
5話 鼠の戦い
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出ては目的地へと疾走する。
既に空は暗くなり、辺りの民家の窓からは温かい光が漏れ出ていた。アルゴの話からも伝わったが、今更広場に向かっても誰も居ないだろう。そうすると、そのソロプレイヤーとやらに会いに行ってみるしかないか。全く、他人が苦手だというのに我ながらよく動こうと思うものだ。
「………燐ちゃん、どこかお出掛けするの?」
ヒヨリもようやくお目覚めのようだ。目を擦りながら覚束ない足取りで出てくるあたり、本当に今まで眠っていたようである。大したものだが感心することはできない。せめてシャツのボタンくらい掛け違えないでもらいたい。
「今日、ボス攻略会議があったらしいんだけど、その時にもうPTが組まれたらしくてな。今から入れてくれるかも知れない人に会いに行く」
「じゃあ、私も一緒に行くね。準備するから待ってて」
一通り伝えると、ヒヨリは服を換えるために再び自室に戻っていった。
初のフロアボス戦だが、どことなくキナ臭さが漂っているようにも思える。俺だけの参加で済むのが理想的ではあるが、相棒がその決定に納得してはくれないだろう。せめて何も起こらないように祈るばかりだ。
「おまたせー」
「行くぞ」
準備を終えたヒヨリを伴って、アルゴから聞いた物件へと向かう。
道中でしっかりと菓子折りも用意し、街の目抜き通りを真っ直ぐ東へ進むとやがて建物が疎らになり、背の低い牧草が茂るエリアへと景色が変化する。その中で敷地内に小川が流れ、自前の水車のある民家が宿泊物件をもつ民家となる。歩を進めるうちに目印である水車の回転する音が近くなり、目前と迫った時の事だった――――
『わあア!?』
………という驚声が目的地から響く。しかもさっきまで聞いていた、あの《鼠》の声によく似ている。そして――――
『………きゃあああああああ!!』
………という絶叫が大気を揺さぶった。直後、短い悲鳴めいた呻き声が一瞬だけ耳に入り、辺りを再び静寂が包み込んだ。
「………ヒヨリ、もう帰っていいか?」
「い、一応ここまで来たんだし………がんばろう?」
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