マフラー
[10/14]
[1]次 [9]前 最後 最初
が氷に支配されようとも人の心までは凍らせられないのだ。
しかし身体は冷たくなる。その日秋穂は友人達と大学の中の喫茶店でお茶を飲みながら温まっていた。
外では雪が降っている。こんこんと降り木々を、道を白く化粧していく。
「あーーあ最悪、あたし今日車で来たのよ」
同じ学部の百合が言った。背が高くプロポーションもいい。外見も派手で長い髪を金に染め紅い短いスカートに黒のストッキングを着ている。上はスカートと同じ色のブレザーでその上から白のコートを羽織っている。大人びた美人である。
「けど今日は雪だって天気予報でも言ってたよ」
秋穂が言った。いつも通り大人しい服装である。青の上着に緑のロンスカート、黒いコートである。
「彼のところに泊まっててわからなかったのよ」
百合はよく彼氏の家に泊まる。彼女は実家から通っているが彼氏はアパート住いだ。
「テレビ位有るでしょ?」
眼鏡をかけた真由美が言った。百合とは同じサークルで秋穂は百合を通じて彼女と知り合った。黒い髪を肩の高さで切り揃え黒いセーターと白いズボン、ダークブラウンのジャケットを着ている。三人の中では最も均整の取れた身体つきをしている。
「有るけどね、あいつゲームばかりしてんのよ。天気予報なんか見たことないよ」
「ああ、それは駄目ね」
「まあそれ以外はいい奴なんだけどね。優しいし」
「男はやっぱり優しいのが一番よね」
「そうそう、いくら顔が良くても性格が悪いと駄目よね」
真由美にも彼氏はいる。彼女と同じ学部の一年先輩である。二人はそれなりに恋愛経験がある。それを踏まえたうえでの話だから重みがある。
「ふうん、そんなもんなんだ」
秋穂は二人の話を聞くだけだった。男の人と付き合った事の無い彼女には入り込みようのない話だった。
「そんなもんって常識じゃない」
「今時男と付き合った事無いのって私達の中じゃ秋穂だけだよ」
百合と真由美が言った。
「由美子も忍も美智代も彼氏いるのよ」
「まあ由美子は二股だけどね」
「ふたまた・・・・・・」
その言葉に秋穂は言葉を呑んだ。
「秋穂にそんなの無理なのはわかってるけどね。彼氏いるといないとじゃ大違いよ」
「そうよねえ、いつも私達が合コンとか連れて行ってんのに。あんた声掛けられても『うん』とか『はい』とかしか言わないもんねえ」
真由美が溜息を僅かに混ぜながら言った。
「無理はしなくてもいいけどね。これはほんとに縁なんだし。けど男に全く興味が無いってわけじゃないんでしょ?」
「そ、それは勿論・・・」
秋穂は小さくなって言った。
「好きなタイプとかあるでしょ?優しい人が好きとか引っ張ってくれる人が好きとか
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ