暁 〜小説投稿サイト〜
マフラー
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る。その上から赤のエプロンを着けている。
 「何してるの?」
 「何って・・・料理に決まってるじゃない」
 春美は苦笑した。
 「それはわかるんだけど・・・何つくってるんだろうかなあって」
 まな板を見る。鶏肉らしい。四角く切っている。
 「鶏肉・・・?四角く切って・・・。カレー?」
 「ええ。チキンカレーよ」
 姉の得意料理の一つである。晴美は牛肉より鶏や魚の方が好きなのだ。
 「けれど早くない?まだ二時くらいよ」
 「今のうちに切ってヨーグルトに漬けておくのよ。そうしたら柔らかくなるから」
 これも晴美がよくやる方法だった。こうすれば鶏肉が柔らかくなり美味しくなるのだ。料理の本で勉強し身に着けたやり方だ。
 「ヨーグルト出してかき回して」
 「はあい」
 姉の言う通り冷蔵庫からヨーグルトを取り出す。それをボウルに入れかき回す。
 かき回し終えると晴美も丁度鶏肉を切り終えていた。ボウルの中へ鶏肉を入れよく浸す。
 「あとは・・・ジャガイモの皮剥いて」
 下に籠を置き包丁でジャガイモの皮を剥く。慣れた手つきだ。
 晴美は人参と玉葱の皮を剥いている。こちらも上手い。秋穂より手慣れた動きである。
 「お姉ちゃんいつも上手いね」
 「年季よ。何時か貴女も好きな人見つけて結婚したら嫌でも上手くなるわよ」
 人参の皮を剥きながら晴美が言った。
 「好きな人・・・かあ」
 「まあ何時かはね。貴女にも何時か出来るわよ」
 「・・・・・・うん」
 晴美も秋穂が奥手で自分に自信が無い事は分かっていた。だがそれでもあえて秋穂にそう言ったのだ。
 (こんな可愛い娘、わたしが男だったら放っておかないのに)
 そう思った事さえある。姉の目から見ても実に可愛い娘だと思っている。だから良い恋愛をして欲しいのだ。
 (けれどこれは本当に巡り会わせだからね。なるようにしかならないか)
 これ以上は言わなかった。二人は話題を変えドラマや新しく出た歌の話等に興じた。
  料理を終え秋穂は自分の部屋に入った。二階の六畳程の一室である。ベッドの他にテレビと勉強机、本棚、そしてステレオがある。あとクッションが数個程。
 「音楽でも聴こうかな」
 ジャンルは問わない。気に入った曲は何でも聴く。流行の曲も聴けば昔の曲も聴く。最近ではクラシックに凝っている。
 「何がいいかな。モーツァルトも悪くないし」
 元々友人に薦められて聴いたのが始まりだった。学校の授業で聴くよりずっといいと感じた。
 「シューベルトにしようかな。折角リュート集買ったし」
 色々迷っているとドアをノックする音がした。
 「はい」
 開けるとそこには一人の少年が立っていた。
 「健児
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