マフラー
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想の花だった。彼女に言い寄る男は絶えなかった。
だが秋穂はその男達の申し出を断り続けた。自分に自信が無い為異性と付き合う事が怖かったのである。女友達も彼女の為に男の友人を紹介したり合コンを設定したりした。だが彼女は男の申し出には応えなかった。否、応えられなかった。交際する事が怖かった。自分の性格や背について何か言われるのではないか、それが気に懸かっていた。
だからこそ姉がうらやましかった。いつも朗らかに笑い自分に明るく優しく接してくれる姉は彼女にとって姉というより自分の第二の母親、理想像であった。実際二人で外を歩くと歳の近い親娘と間違われたこともある。春美が老けているのではなく秋穂が幼いからだ。実際晴美は二十台後半といっても充分通用する容姿であったし服装もジーンズ等若々しいものが多い。だがやはり何処か所帯じみたところがあるのだろう。歳相応に見る人もいる。秋穂は完全にその幼い容姿のせいだった。それがまた嫌でしょうがなかった。
だが姉を嫌う気にはならなかった。幼い頃から可愛がってくれて今も自分の子供と同じ位可愛がってくれる姉が大好きだった。秋穂は料理が好きだが色々とメニューを教えてくれる。パッチワークをすれば喜んで部屋に飾ってくれる。そんな姉を嫌いになれる筈はなかった。
ぼんやりと自分の小さい背や胸の事を考えながら帰路を進んでいた。風に吹かれた落ち葉が肩や髪にかかる。
落ち葉を手で取り払いながら秋穂は歩いていた。二十分程歩いたであろうか。姉の家が見えてきた。
ごくありふれた二階建ての家である。黒い屋根の他これといって特徴の無い家である。門を開け玄関の扉を開けた。
「ただいま」
靴を脱ぎながら帰った事を伝える。家の奥から姉の声がした。
「お帰りなさい、今日は早いのね」
高く張りのある声だった。可愛らしいと声まで言われる秋穂とは全く違う声だった。
「講義は午前中だけだったしサークルも無いしね。たまにはこういう日もあるわ」
「そうなの。今暇かしら」
「うん、友達と遊ぶ予定もないし」
アルバイトは今はしていない。お金が欲しくなったら学校が紹介する短期のアルバイトをやる。甘い両親のおかげでそれでも充分やっていける。
「それだったら来て。秋穂にやって欲しい事があるの」
「何?」
コートをかけ家の中へ進んでいく。声は台所の方からした。
「どうしたの、お姉ちゃん」
台所に入って見てみると姉が何やら動いていた。秋穂が見たのは包丁で何かを切っている姉であった。
薄い茶色の長い髪を束ねている。顔は細面で眉はしっかりとしている。唇は小さいが下がやや厚い。黒い瞳は二重である。女性としては結構高めの均整のとれた身体をしている。ブラウンのセーターに青いジーンズを履いてい
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