マフラー
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そう呼んでいた。これは健児の気遣いでもあった。
「いいのよ。これから、ね」
「うん」
健児は頷いた。秋穂はそれを見て微笑んだ。
「じゃあね」
「うん、あき・・・いや叔母さん」
「うん。ふふっ」
秋穂は悪戯っぽく笑って部屋を後にした。
「これでいいのよね、これで」
秋穂の初めての恋は終わった。その幕を自分で降ろした秋穂は部屋に戻った。
冬は過ぎた。春になった。ある小春日和の休日だった。健児は部活、理は休日出勤で家にいるのは秋穂と晴美だけだった。
「お姉ちゃん、ちょっといい?」
秋穂が台所に入って来た。
「何かしら」
秋穂のはにかんだ笑いに晴美は少し首をかしげた。
「お姉ちゃんに会って欲しい人がいるんだ」
「?誰?」
増々話がわからなくなった。自分に会って欲しい人とは。
「その人・・・何処にいるの?」
「それは・・・ちょっと来て」
秋穂が案内したのは家の玄関だった。
「・・・どうも」
そこには一人の青年がいた。黒い髪に長身である。黒ジャケットに青ジーンズを着た結構格好良い青年である。
「秋穂、この人は・・・?」
「ボーイフレンドの原田君。大学の同級生なの」
「はい・・・」
やけにかしこまっている。それを見て晴美は妙に可笑しかった。そういえば理も自分の両親に初めて会った時はこんな感じだった。
(良かった、健児の事はもう完全に吹っ切れたのね)
晴美は秋穂を見て微笑んだ。だが秋穂はそれに気付いていない。
(本当に子供なんだから)
原田に向き直った。
「原田君ね。秋穂の彼氏か」
そう言って晴美は意地悪そうに笑った。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん、そんなんじゃあ・・・・・・・・・」
秋穂は顔を真っ赤にした。
「いいのよ、隠さなくても。秋穂にもやっといい人が見つかったんだし」
「だからそんなんじゃ・・・・・・」
「言い繕っても駄目、私はあんたのお姉さんなのよ、何でもお見通しなんだから」
「え、ええっ!?」
秋穂は更に顔を赤らめた。
「さあ上がって。丁度お昼が出来たのよ」
「は、はい」
秋穂とその彼氏原田を誘った。三人は玄関を上がりリビングへと歩いて行った。リビングに置いてある花の優しい香りが漂ってくる。
マフラー 完
2003・10・24
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