マフラー
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なかった。一階のリビングに下りた時誰もいなかった。晴美も買い物へ出かけたらしくいなかった。
テーブルには昼食が置かれていた。ホワイトシチューとローストチキンであった。テーブルの上には書き置きがあった。晴美の字だった。
『昨日の夜の残り物で御免ね。これ食べて学校へ行きな』
大きく活気のある字である。晴美の字は昔からこんな感じである。秋穂の字が細く小さいのとは対照的であった。
「お姉ちゃん・・・・・・」
秋穂はそんな晴美の暖かさが有り難かった。電子レンジで料理を温めると食べ着替えて学校へ向かった。いつものロングスカートとコートであった。
学校の帰り秋穂は昨日のお菓子屋へ寄った。そして一つ豪勢なチョコレートを買った。
次に毛糸を買った。そして家へ帰った。
それから秋穂は何かを一生懸命編み始めた。周りの者が何を編んでいるのか聞くと微笑んで答えをはぐらかした。
「はい、健児君。これあげるね」
バレンタインデーになった。秋穂は健児にチョコレートをあげた。
「ありがと。あ、これゴディバだね」
「そうよ、高かったんだから」
チョコレートを手渡して秋穂は微笑んだ。
「ありがと、後で頂くよ」
健児は見るからに嬉しそうだった。
「あとね・・・これあげる」
秋穂はあるものを差し出した。
「あ・・・・・・・・・」
それはマフラーだった。一枚の大きい純白のマフラーだった。
「健児君マフラー持ってなかったでしょ。だからプレゼント」
「僕に?何か悪いなあ」
マフラーを手に取り健児は照れくさそうだ。
「まだまだ寒いからね。これ首に巻いて学校へ行くといいよ」
秋穂は健児を見上げて言った。その顔は甥に対する叔母の顔だった。
「うん・・・・・・」
健児はマフラーを首に巻いてみた。
「良かった、似合うわよ」
「そう?」
健児の顔は真っ赤になった。
「あの、秋穂さん」
「何?」
秋穂は優しく微笑んで問うた。
「有り難う・・・・・・・・・」
その言葉に秋穂は返した。
「いいのよ、叔母さんなんだし。気にしないでよ」
「うん・・・・・・・・・」
健児は感謝の気持ちはあった。だがそれ以外の気持ちは無かった。秋穂にはそれが解かっていた。
「じゃあね。今貸してる漫画、読み終わったら返してね」
そう言って秋穂は部屋を出て行った。入口のところで振り向いた。
「そうだ、これからは私の事叔母さんって呼んでね、秋穂おばさんって」
「え・・・・・・」
「名前で呼ぶのって変でしょ。だからね、叔母さんって」
「いいの?」
秋穂があまり歳が離れておらずまだ妙齢であった為
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