外伝:ブルハ、ブルハ以外を歌う
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とても、聞きなれた声。
今も昔も聞いたことがある――そうだ、これは俺の声だ。
見覚えがあるはずだ、これは俺じゃないか。
「歌ってるのか、お前も」
「そりゃ歌ってるだろ。俺から歌を引いたら何が残るよ?」
「ま、それもそうだ」
自嘲気味に肩をすくめた目の前の自分は、ギターを抱えている。
俺のギターよりも二回りほど格好いいギターだ。ちょっとばかり羨ましい。俺の癖に俺よりいいもの持ってるなんて、金銭に余裕があるのか。
「そういうお前はどうなんだ?フルダイブゲームやらされてんのか?」
「ん……そっかお前はまだ続けてるんだな。俺はすっぱりやめたよ。SAO連中ともほとんど会わない」
「え、やめたのか?薦められはしたんだろ?」
「まあな。でも……本気でデビューするんなら、SAOの肩書は邪魔になるかもって思ってな。みんなには申し訳ないが断ったよ」
俺より大人びている気がする目の前の自分は、遠い目をして上を見上げた。
「思い出すな、SAOの記憶。攻略組の力強い足音、客の足音、聞き慣れたネット界隈の用語とか、ゲームの行く先とか、恋話とかさ。俺に話しかけて歌を聞いてくれる人が増えたり離れて行ったり……全部が全部、きっと今の俺の支えになっている」
「なのに手放したのか?大成するために……」
「お前は違うのか?」
「む、まぁ。俺はちょっと押しが弱くて流され易いみたいだ」
ふーん、と目の前の自分が相槌を打った。
自分の意志力の弱さを見せつけられた気がして気まずげに目をそらすが、目の前の俺はそんな俺から目を逸らしていた。
夢を追うために決断をした俺と、決断できなかった俺。
俺には自分が目を逸らした理由がわかるのに、決断できた俺が目を逸らす理由はわからなかった。
「どうしたんだ?ちゃんと自分で考えて決断して、夢を追いかけてるんだろ?」
「あ、ああ……最近じゃ結構、現実世界で名が売れてきてさ。SAO関係なしに人気あるんだぜ」
「立派なことじゃないか。どっちつかずでダラダラしてる俺にはすげぇ耳の痛い話だ」
「でも、さ」
自分のギターに目を落とした目の前の俺が、呟く。
「でも、SAOのみんなとはもう殆ど会わない。時々ファンレターで知らせが届くけど、やっぱりあの頃のファンと離れちまったなぁ、って寂しい気分になるのさ」
出会って別れてを繰り返しながらも夢へと舟をこぎだした俺は、その夢を積み上げる土台になったであろうみんなと離れなければいけなくなった。繋がりは消えていないけれど――思い出す記憶は薄れて、遠くて、少しぼやけて。
「俺とイナズマみたいに。いや、イナズマとミスチルから離れたときの俺みたいな……」
「うん、そんな感じだ。踏み出してから後ろを見たらさ……もうとてもじ
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