外伝:ブルハ、ブルハ以外を歌う
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った。
「――ああ、ところで兄ちゃんや。出来ればさっきの曲、演奏続けてくれんか?」
「なんだ?気に入ったのかい、さっきの?」
「剣を握ってるとな……どうしても、牙突とかやりたくなるのが男の子だろ?」
「???」
楽しい思い出はいつ思い出しても楽しくていいものだけれど――
それは過去でしかないから、今は別の事を考えなきゃ――
そんな切ない思いを振り払えない夜の孤独の中で――
大切だったあの人の笑顔を不意に思い出そうとしたけど――
もうどんな顔だったか思い出せないのに気付いちゃった――
後に、俺はその曲が有名な漫画原作のアニメでオープニングだった事を知らされた。20年近く前の作品だが、おじさんには未だその作品のキャラクターたちに憧れがあるらしく、そんな折に懐かしいメロディを聞いてリズなんとかと入れ替わるようにここへ来たらしい。
曲は、部分的に怪しかったが見事に弾ききった。自分でも少し驚いたが、おじさんに「昔の思い出がよみがえった」と言わせる程度にはしっかり出来ていたようだ。
こんな世界に閉じ込められて強さも何もあるかと思っていたが、毎日弾き続けたギターの努力はきっちり脳に蓄積されていたらしい。実際に体が動いている訳ではないから、レベルアップの無い本物の経験値と言えるかは微妙だ。
それでも少しは腕が上がっていたのだな、と一人ごちた。
「出来れば女の子ボーカルで聞きたかったんだけど、まぁ贅沢は言えんわな」
「………まぁ、確かに。思い切り女性向けだしな」
やっぱりブルーハーツを歌おうと改めて感じるブルハだった。
= SS:失われた選択肢 〜パラレルクロス〜 =
俺はギターを弾いて、歌を歌っている。
もう、何のためにとかそんな月並みな疑問も思い浮かばない。
俺は歌うから、歌をやめていない。自分の人生の主軸に歌がある。
歌っているときは無心というわけではない。いつだって曲の思い出とか、個人的な印象とか、どんな風に歌いたいかとかいつも余計なことを考える。
でもその余計なことが、俺にとっては多分大事なものなんだろう。俺の過去と歌を脳裏に刻み付けた、忘れてはいけないものなんだ。
「よう」
誰かが俺に話しかける。
俺は演奏の手を止めて、そっちを向いた。
見覚えがあるようでないようなその顔を見ていると、向こうから話しかけてきた。
「最近どうだ?」
「どうって言われてもな……」
いつものように学校に行って勉強して、終わったら自由時間。
路上ライブ、仮想世界ライブ、ユウキの楽器練習手伝い。その繰り返しだ。
「俺としては普通だとしか言えない。それが俺にとっての日常だし」
「そっか」
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