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渦巻く滄海 紅き空 【上】
三十七 たからもの
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何処からか息を呑む音がした。
「記憶を消されたにしろ喪失したにしろ、あの夜ハヤテが何かを目撃したのではないかと」
忍び達の視線が火影一人に集中する。全盛期と変わらぬ鋭い双眸が、彼を取り囲む忍び達の身に降り注いだ。

「何か重大なモノをのぉ…」






暫し静まり返る。沈黙の中、意を決したような一声がおずおずと上がった。
「ならば、やはり中忍試験は中止して…」
「でも正体を明かしてまで試験を中止するなと脅しをかけてきたのよ?もし中止した場合、何を仕出かすか…」
即座に反論するアンコの言葉を遮るように、誰かが声を張り上げた。
「しかし何かあった後では…ッ!」
「ただでさえ一人で小国を落とすほどの力を持っているのだ!同盟各国が大蛇丸と組むこともありえる…!!」
「確かに…。里に恨みを持つ大蛇丸を利用して、木ノ葉を裏切ってもおかしくはないな」
気色ばむ同僚達の片隅で、カカシが皮肉めいた言葉を漏らした。
「ま、同盟条約なんてのは口約束みたいなものだからね。かつての忍界大戦がそうだったように…」
昔を思い返したのか、どこか遠くを見つめるカカシ。翳りの入った彼の瞳には周囲の喧騒など映っていなかった。
瞬く間に混乱に陥った議場。騒然とするその場に静かな声が割って入る。

「静まれ」


三代目火影の一声で議場は水を打ったように静まった。押し黙った忍び達の顔触れを見渡しながら、彼は眥を決する。眦の皺が更に深くなった。
「とにかく情報が少なすぎる。余計な勘繰りは無用じゃ」
火影の明快な声に続くように、ホムラとコハルが口を開いた。
「既に各国へ情報収集に暗部を走らせてある。尤も友好的な国ばかりではないから、秘密裏に進めるしかない。少々時間はかかる」
「だが迂闊に動くと危険じゃ。そこに敵の狙いがあるやもしれん…」
小難しい顔をする二人の間で、火影は「なあに」と軽く笑ってみせた。

「いざとなったら木ノ葉の力を総結集して戦うのみよ。それにワシは貴様らを信頼しておる!」

火影の凛とした声はその場にいる者達の不安を払拭する。年を取って猶威厳を見せるその笑顔を目にすると、今まで忍び達の心中を巣食っていた懸念が杞憂のように思われた。




室内の者達が火影の一声で士気を上げるのに反し、議場の扉を背にしていた者が小さく嘆息した。ちらりと背後の扉を一瞥する。外にいても聞こえてきた師の声に自来也はガリガリと頭を掻いた。
(何を悩んでおる。じじい…)

長年の付き合いでわかる。傍目には忍び達を励ますかのような火影の声音は、何処と無く憂いを帯びていた。
部下達の手前、火影としての威厳を損なわぬように振舞ってはいるが、その実、何かを抱え込んでいるような…。

何時に無く険しい顔で佇んでいた自来也の前で扉が
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