暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
信じる道が茨だらけの通過点であることに殺し屋達は気付かない
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 「お前ら、敵を潰すのが優先だからな!」

*****

 それは外界に漏れる事のない出来事だった。パーキングエリアの地下出入り口前に閃光手榴弾の真っ白い輝きが届いたのは約0.5秒ほどで、人通りの少ない道だからか、目撃者は一人もいなかった。

 ケンジはどうして自分が座り込んでいるのか理解出来なかった。気付いたら冷たいコンクリートの上に尻を置いていた。視界は依然として真っ白で、聴覚もままならない。

 ケンジ達が放った閃光弾の威力は、ほぼ密室状態の地下において絶大な効果を発揮した。高熱を遮断した太陽が突然放り込まれたような感覚。耳と目を塞いで口を開ければある程度防ぎれるのだが、裂綿隊は愚か、自ら光のスイッチを押したケンジ達でさえ、爆発までのタイムラグで回避行動を取る事が出来なかった。狭隘な空間であり、敵との距離がかなり近かったのが爆発をさらに早める要因だったのかもしれない。

 そんな共倒れと化した戦場で、ケンジは僅かな微音を感じ取った。もしかしたら勘違いかもしれないと思いながら、耳に神経を集中させる。

 ――これは……車のエンジン音?でも、どうして。

 ――まさか、敵の本丸は車の中にいたってこと?

 目を見開くよう脳に指示を飛ばしても、視覚はまだ閉ざされたままで何も見えない。ただでさえ聞き取りにくい聴覚の隙間から、エンジン音らしきものが遠ざかっていく。推測が本当なら、閃光弾を浴びなかった敵は逃げた事になる。

 やがて聴覚が少しずつ回復し、外の音が勢いよく流れ込んできた。だが、聞こえてくるのは打撃音に乾いた銃声、肉に刃物が突き刺さる単調でしっとりした音。脳内でそれらから絵を連想し、浮かんでくるのは無惨なものだけだった。

 数分後、ケンジの視界が戻ったとき、最初に飛び込んできたのは目の前に転がっていた誰かの首だった。

 「……っ!」

 危うく吐きそうになるのを堪え、彼は虚ろな目で周りを見渡した。

 辺りに広がるのは人の死体と赤黒い血液、乾いた人肉から漂う強烈な腐臭。それらが一つになってケンジの五感の一部に精神的なダメージを与える。

 「大丈夫、暁君」

 自分の名を呼ぶ声がしてそちらに首を向けると、そこには宮条がいた。ワンサイズ小さいパンツスーツには飛び血が駆け巡り、右手に持つナイフの刃からは血が(したた)っている。

 「み、宮条さん。どうしてここに?」

 「地下に入って、私は車に乗せられたの。車内で連中から触られまくって女っぽく嫌がってたら、貴方達がやって来た。それで閃光手榴弾が爆発したあと、用済みって感じで放り出されたわけ」

 「ストレス解消に寝っ転がってる敵は全部殺しといたから」とケロリとした調子で言う彼女だが、その顔は疑問と苛立ちで溢れ返ってい
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