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横浜事変-the mixing black&white-
横浜の街は殺し屋に対しても受け身のままだ
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れた堅気ではなさそうなそれを見て、彼は端正な顔立ちを苦渋の色に滲ませた。

 「……やられた。今殺した連中は偽物だ!」

 警察の中には組織と手を繋ぐ人間が多くいるが、この手際の良さを考えると、ヘヴンヴォイスか、彼らと裂綿隊を繋ぐ『仲介人』があらかじめ手を打っていたのだろう。つまり彼らは自分達の都合が通じないというわけだ。大河内の脳に甲高い警報音が鳴り響き、すでに狙撃銃を専用バッグに収納した法城達に向かって言った。

 「早くここを出よう。ヘヴンヴォイスはバンで逃走、我々はそれを追う」

*****

同時刻

 「ここまでは予定通りだ。後はあいつらが俺らのケツを追っかけてくれりゃ良いんだが……」

 ヘヴンヴォイスらが乗る白いバンは、緩やかな速度で横浜マリンタワー付近から離脱していった。何度も反対車線をパトカーが通り過ぎていたが、誰も怪しげな白いバンの方を見ない。それよりも殺人現場の方が重要なのは言うまでもないだろう。

 助手席に座るミルは後部座席で煙草を吸っていたルースをミラー越しに睨み、文句の言葉を口にする。

 「ルース、車内で煙草は止めて」

 「ん?ああ、わりいわりい。最近ニコチンが足りなくてな」

 相変わらず緊張感のない声。もはやそれを咎めたり皮肉ったりするのも面倒なので、ミルも他のメンツも言葉を返さない。だがルースは涼しい顔をして呟いた。

 「で、これから街中に出るんだっけか」

 「そう。さっき『彼』から連絡があって、敵と鬼ごっこをしていろって。裂綿隊の人達と時間を調整するらしい」

 「鬼ごっこって……横浜は俺らの庭じゃないぞ?」

 「でもやるしかない」

 ミルがそう言った直後、ミラーに一台の車が飛び込んできた。一般車とは違う、ブラウンのバン。自分達と同じく内部の状況が窺えないそれに、ミルは運転手にこう言った。

 「後方に敵。指示が出るまで街中を走って」

 「あいよ」

 短く答えた仲間の運転手は少しだけ速度を上げた。それに追随する形で後ろのバンも付いてくる。二台のバンは少し先にあったホテル『ニューグランド』を左折し、やがて大きな通りに出てきた。大きな通りは国道133号線という名前で、バンは横浜中心に向かう道路を並行して走り出した。

 最初に攻撃してきたのは殺し屋統括情報局だった。自動で下がった窓から現れたのは仮面を付けた殺し屋で、手に握る拳銃を発砲。しかし防弾性に優れたミル達のバンがその程度でやられるわけがない。彼らと向かい合う席に座る仲間は、後部座席の小さな武器庫から三弾連射のライフル銃を取り出し、窓を開けるとそれを隣のバンに撃ち始めた。

 ダダダン、ダダダンという規則性のある音は、歩行者には救急車がサイレンを鳴らして走っているように
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