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横浜事変-the mixing black&white-
横浜の街は殺し屋に対しても受け身のままだ
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、再びステージの袖にヘヴンヴォイスと思われる男女が現れ、そのままステージに顔を出した。観客が彼らを厚い声援で迎え、それがライブ開始の火蓋となって切り落とされた。
大河内はまだ狙撃の指示を出さない。彼らが曲を歌い始めてからと決まっているのだが、それ以外にも理由があった。
――なぜ奴らはノコノコ顔を出せるんだ?
彼らがヘヴンヴォイスというロシアの殺し屋集団であるのは既知の事実だ。敵もそのぐらいは認知しているだろうに、こうして他人事のようにステージに立っている。狙撃される可能性など、殺し屋なら足し算の答えを脳裏で描くような感覚で推測出来る筈だ。
――この作戦、裏があるようにしか思えない。それなのに本部は作戦を提示してきた。局長の名を口出すこともこれまでなかった。
――何かがおかしい。奴らは裂綿隊と繋がっているかもしれないんだぞ?赤島さんの仮説はかなり的を射ている気がするな……。
望遠鏡でステージの方を注視しながら、昨日の事を考える大河内。ヘヴンヴォイスは普段の独特なコスチュームを着込み、ボーカルの金森クルミが観客に向かって自己紹介などをしている。
一見してみれば人気急上昇中のロックバンドとしか思えないが、正体を知ってしまった以上は見過ごせない。ちなみに、護衛任務後の彼らからの接触はこれまで一度もなかった。だからこそ、今のように公の場から眺めるような状況が訪れようとは思ってもみなかった。
――ひょっとして、本部はすでに敵の中なのか?そして今、我々は敵の掌で踊らされている、と。
――いや、まさか。殺し屋統括情報局にアクセス出来るのは局長と殺し屋チームのリーダーだけだし。
自分が出任せに考えた事が現に起こっているとは露知らず、大河内は眼下の殺害対象を望遠鏡で見やり、狙撃銃を構えた殺し屋達に命令した。
「敵を一人残さず殺せ」
指示を受けた法城ら狙撃班は、その言葉を待っていたかのような軽さで銃弾をステージに向かって撃ち込んだ。自動装填なので発射済み薬莢は自動的に銃から排除される。いちいち狙いを定め直さなくて済む分、こうした場面ではかなり役に立つ。
大河内は遠目でステージ先を確認する。そして内心でガッツポーズを取り、それから全身が総毛立った。
望遠鏡の丸い円から覗くステージには真っ赤な華が六つ咲き誇り、楽器にまで装飾がなされている。一方、それを目の当たりにした観客はパニック状態に陥り、スタッフの誘導も聞かぬまま我先にとステージから離れていく。それだけ見れば仕事は完璧に成功したように見えたのだが、問題はここからだった。
――警察の到着が早い……!それに……。
大河内は対象が死亡したのと同時に、隣のビルから一台のバンが出て行くのを見た。遮光フィルムが貼ら
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