マブラヴ
0832話
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こちらに猛スピードで走ってきた車が、急ブレーキで止まる。
余程に急いできたのだろう。……まぁ、無理もない。これから交渉をして何とか協力態勢を整えようとしていた相手に、自分の国の軍隊が奇襲を仕掛けたのだ。
それも、その相手……つまり俺達シャドウミラーが持っている戦力は、この国どころかマブラヴ世界そのものを滅ぼしても尚余りある戦力を持っているのだから。
「無事……のようだな」
軍人らしき数人が降りて周囲の安全を確認した後、安堵の息を吐きながら車から降りてきたのは60代程の白人。
オーストラリアの外務省副長官でもあり、政治家の中では最も早く俺と接触したクリメナ・バソールトだ。
これまで何度か会話を交わしたが、その時に受けた印象は老獪な政治家といった印象だった。
人間が追い詰められているこのマブラヴ世界で2番目の国力を持つオーストラリアで高い地位にいるのだから、有能なのは間違いないだろう。
だが、今その有能な政治家の表情は強張って血の気が引いており、いつ倒れてもおかしくない程に顔色が悪い。
「ま、見ての通りだな。こっちに被害は皆無だ」
その言葉に戦術機を取り押さえているメギロートやイルメヤ、シャドウへと視線を向け、実際にこっちの戦力が殆ど無傷だというのは理解したのだろう。
「戦術機2個中隊を相手に無傷……だと?」
先程とは違う意味で表情が強張る。
まぁ、数はこっちの方が多かったが、それでもオーストラリア国防軍の戦術機は全機が取り押さえられている。損傷が少ない機体が多いのは、あくまでも俺が生け捕りをするように命令したからだ。
その状態でシャドウミラー機が受けた一番大きいダメージが、メギロートやイルメヤの装甲についている汚れ程度や数cm程度の傷だったりする。
36mm突撃機銃では、例え劣化ウラン弾を使っていたとしてもメギロートに対してのダメージはほぼ与える事は出来ない。OGs世界でも一般的な95mm弾頭のM950マシンガンなら話は別だったのだろうが。
もしこれが殲滅するように命令していれば、何をするでもなく一方的に全滅していたのは、軍人ではないクリメナにしても理解出来るのだろう。
「まあな。……さて、お前が血相を変えてここまで来たって事は、オーストラリア政府は俺達シャドウミラーと敵対するつもりはない。そう考えてもいいのか?」
その言葉に、クリメナが一瞬の躊躇いも無く頷く。
「勿論だ。現状のオーストラリアには、シャドウミラーを敵に回すような力は無いし、そもそも君達の戦力がどれ程のものなのかは演習を見て知っている。そんな相手とわざわざ敵対的な関係になろうとは思わんよ」
「だが、現実には見ての通りだ」
「いや、これは……」
慌てて口を開こうとしたクリメナの言葉を
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