SS:狼、白、そして氷槌
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うる存在がいるとすれば、それはやはり、神か悪魔に相違ない。
「ほう。ほうほう……ほほう!?アレを喰らって倒れぬだけでなく正面から破るか!良きかな良きかな、いいぞでくのぼう!その気骨はよい、実によい余興である!」
女の顔が、喜色で弾ける。
まるで新しい玩具を試したくてしょうがない子供のように目を煌めかせた女性の身体が、氷を蹴って更に高く舞い上がる。
「なればこそ妾も本気の出し甲斐もあるというものよ!」
その頭髪の隙間から出ずる、狼の耳。
腰から延びる、美しい純白の尾。
そして骨の髄まで噛み砕かんとする牙が、めきめきと反り出す。
そして、その双眸からは――黄金の光が漏れる。
その国に住まうものならば、その意味を理解できたろう。
黄金の瞳とは、この国で「白狼の一族」と呼ばれる王族の証であるのだから。
そして「白狼の一族」は先祖代々から、ある仇名で呼ばれている。
「――今まで妾には遊び相手がおらなんだ!なにせ本気でこの手を振るえば『国ごと砕けてしまう』が故にな!!」
王となれるのは、一人でエドマという国を相手に出来る実力を持った者のみ。
故に仇名は――「国潰し」。
「さあ、貴様は国潰しの怪物を喰らいきれるか!?喰らいきれぬならば――この白銀の大地へ沈むが良い」
= =
「――ま。――オさま。――ネスキオさま?お客さんですよ?」
「む……なんだフラッペか。女王陛下と呼べ」
「えー。私とネスキオ様の仲じゃないですかぁ〜!」
うたた寝から現世へ女性――ネスキオの意識を引き戻したのは、侍女のフラッペだった。
気だるげに体を起こしつつ、見ていた夢の内容を思い出してニヤニヤと笑う。
――アレとの喧嘩は、実に楽しかった。人生でもう2度とあれほどの喧嘩は出来まい。
もしも旧友たちが本気で自分と敵対したならば可能性は無でもないが、可能性がありそうなのは行方不明中のシグルとルードヴィヒくらいのものだろう。
「……して、誰が来たと?」
「はぁ……鬼儺と名乗っておりますが……」
「お?その客は黒ずくめのわっぱであったか?」
「ええ……」
「なんと!」
エドマ氷国連合の盟主であるネスキオに謁見の申し込みもなく現れ、鬼儺を名乗る黒ずくめの子供などネスキオはたった一人しか知らない。
最近はすっかり宮殿に姿を見せなかったが、過去の夢は旧友来訪の兆しであったようだ。寝ぼけ眼もすっかり冷めたネスキオはまるで子供のようにウキウキしながら体を起こす。
「先の夢は吉兆の知らせであったか!!ささ、急いで坊を連れてまいれ!!他の侍女に茶と菓子を持って参るよう急いで伝えよ!!」
「あのーネスキオさま。私、その『坊』さまの事を知らぬので
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