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青い春を生きる君たちへ
第3話 平手打ち
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「いやー、小倉くんは本当にはっきりとした物言いをするんだねえ。俺感心しちゃったよ。雅子があんなにオロオロしてるのは久しぶりに見た」


小倉の隣で田中がコッペパンを?りながら笑顔を見せる。小倉は横目でその笑顔をにらみ、「何で俺はこいつと一緒に居るんだ」と何度目か分からない自問をした。
さきほど瀬尾とのちょっとした修羅場を収拾した田中は、何故か小倉に一緒に昼を食べようと言ってきたのだ。小倉は肯定もせず、かといって否定もせずに居たら、今はこうやって結局田中と一緒に校庭を見下ろすベンチで一緒にコッペパンを齧るという状況になっている。


「突然転校してきてさ、あんまり人と関わろうとしてないみたいだったし、どんな奴か測りかねていたけど、思った以上に面白そうだ。」
「へーえ、そりゃありがとう。スポーツ万能学業優秀容姿端麗明朗快活な田中智樹様にそのように言って頂けて光栄至極、天にも登る心地です」


田中の方を見ようともせずに、心のこもっていない台詞を棒読みする小倉。田中はそんな小倉に対しても朗らかな表情を崩さず、「おいおい、その言い方は陰険だぞー?」と頭を小突いてくる。やけに馴れ馴れしい態度だが、実にいい顔でそれをやってくるため、邪険に扱う気にもちょっとなれない。小倉は顔をしかめた。


「……あのなあ、嫌な奴じゃない奴がさっきみたいな事言うと思うか?言わねえだろ。嫌な奴だからこそ、何気なく毎日偉そうに振る舞ってるあんなバカ女が、その実全く大した事なんかねえ事が分かんだよ。素直な良い子ほどなあ、ああやって、デカい声でちょっと『お前は私の言う事を聞かなきゃならない』って感じ出されると、『本当にそうかもしれない』って思っちまって、唯々諾々と従っちまうんだ。そう考えると、素直さなんてのは弱さそのものだな。自分を食い物にされたくなきゃあ、陰険にでもなってみせるのが正解だよ。」
「ほうほう……」


小倉の講釈を、田中は興味深そうに聞いていた。小倉が言ってる事は擦れ切った、学校の先生が聞いたら青筋立ててガチ切れてきそうなラディカルな意見だが、しかし、それを田中は実に素直そうな顔をして聞いていたのだった。


「うーん、やっぱり小倉くん、面白いなあ。俺もっと君の事が知りたくなってしまったよ。なあ、俺と友達になってくれよ。それとも、俺じゃ不満か?」


田中はニッコリ笑って小倉の方を見てきた。その笑顔は同じ男である小倉から見ても眩しい。女だったらイチコロだったろう。なんとまあ、男前なこと。


「一体何が友達で何が友達じゃないのかっての、ややこしいけどな、まあ話しかけたりする分には勝手にすりゃ良いさ」


小倉はそっぽを向きながらそう言ってお茶を濁す他はなかった。なんだよ、友達になろうって。こいつ少年漫画の読みすぎじゃない
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