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クルスニク・オーケストラ
第八楽章 エージェントの心構え
8-1小節
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助けを求めることもできずに。それも子供の足ではすぐに追いつかれる。

 ジゼルは《エリーゼ》を歩いて追った。追いつくごとに、ペナルティとばかりに《エリーゼ》に斬りつけた。ルドガーたちからすれば細い、幼い少女からすれば鋭い切り傷を負うたびに、《エリーゼ》は転んでしゃくり上げた。

 やがて《エリーゼ》は行き止まりに突き当たった。

「鬼ごっこもおしまいかしら」
「あ、あ……」
「それじゃあ、サヨウナラ。お嬢さん」

 ジゼルのキャンドルスティックは、狙い違わず《エリーゼ》の胸を貫いた。
 キャンドルスティックが抜かれる。穂先には黒い歯車。

 ジゼルはキャンドルスティックを厳かに直立させる。すると時歪の因子は粉々に砕け散り、その破片はジゼルに降り注いで、消えた。

 世界が、ひび割れ、崩れ落ちた。
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