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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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師走に入ると陽が落ちるのも早い。紺と橙の混ざり空の下、モモは厚木駅の近くにあるゲームセンターに連れて来られていた。
溢れ出る大音量のゲーム音、派手な発光を繰り返す筐体。
秋葉原でもいくつかこの手の店舗の前を通り過ぎたりしたが、実際中に入ったのはマクドナルド同様初めてだ。
美希はクレーンゲームのマニピュレーターを真剣な顔で操作している。
モモはその相貌を横から、なぞる様な視線で確認していく。
先ほどマクドナルドで偶然出会った少女、斎藤美希は、今日蔵馬と共に捜索を命じられた少女の名前だ。
しかし車の中で見た資料写真の顔と、今目の前にいる美希の顔は、目鼻立ちは似ているがいくつかの特徴が合致しない。
髪の毛は染めればいいが、目も瞳孔が大きく三白眼のそれではなかった。
同姓同名、他人の空似というやつだろうか。
「あの」
「あー、取れない!」
マニピュレーターが掴んでいた間抜け面した巨大カエルのぬいぐるみを落とした。
あまり可愛くないが、美希はこれが欲しいのだろうか。
「これが欲しいの?」
「ん? 別に欲しいわけじゃないよ。取れそうだったから、ちょっとやってみただけ。モモもやってみる?」
「私お金持ってません」
「マクド食べてたじゃん。まさかあそこで全部使ったの?」
「あれはご飯代として貰ったものです」
「あっそ。まあワンプレイ分くらいなら奢るよ。やってみな」
美希は二百円を筐体に投入し、モモに場所を譲る。
前後と左右の操作ボタン。これを押してマニピュレーターを狙いの場所に持って行って、中のぬいぐるみをホールドして手前の穴に落とすのだ。
モモはとりあえず、美希が動かしたカエルに狙いを定める。
「お……おお……! モモ上手いじゃん!」
美希が歓声を上げた通り、モモは卓越した空間把握でクレーンを的確な位置に運んだ。
マニピュレーターの腕が開き、降下。カエルの首に爪が食い込み、大きな図体を持ち上げた。
ゆっくりとカエルは移動し、外へ続く穴に落とされる。
「おおおおお!」
が、ギリギリのところで引っかかり、受け取り口にまでは降りてこなかった。
「おおおおお……」
美希はがっかりと肩を落として、追加の硬貨を財布から探す。
しかしそれを投入するより前。
モモが筐体を蹴った。
「ちょっ!?」
義体の脚力で衝撃を食らい、クレーンゲームは横転しそうな勢いでグラグラと揺れる。
中にあった景品たちは派手に転げ回り、引っかかっていたカエルも落っこちた。
「はい」
突然の暴挙に口を開けて驚く美希を尻目に、モモは取り出し口からぬいぐるみを引っ張り出し、美希に差し出す。
「いやいや……はい、じゃないって。てい
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