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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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マイチ何が起こっているのかが分かっていない。ただ」
蔵馬は後ろ手に、奪った代紋バッジを差し出す。
「関西を占める広域指定暴力団扇組、その直系である大柳組の代紋だ」
「さっきのヤクザさんたちですね」
「そうだ。その大柳組が、君を狙っている。動機は現在調査中。まあ、君のお父さんかお祖父さん絡みだろうな、たぶん。何か心当たりは?」
「分りません。最近パパともお祖父ちゃんとも会ってないから……。それで、その、二人は?」
美希は蔵馬の後頭部と、モモの横顔を交互に見る。
「さっきも言ったが、俺たちは国立児童社会復帰センターの人間だ」
「その名前だいぶ前にちらっとだけニュースで聞いたことがあるんですけど、でもそこって確か福祉施設なんじゃ……」
「表向きはな」
「センターは、実は政府の秘密警察なんです。クラマさんはそこの職員」
「ちょっと待って……秘密警察? アニメか何かの話?」
「クラマさん、やっぱり私たちってそういう風に見られるんですね」
「それだけ俺たちの隠蔽工作が上手いって事だ」
さすがに信用しきれない様子の美希だが、唐突な暴力団組織の襲撃と、拳銃を掲げて殺意を眼光に冷たく秘めたモモの姿を思い出す。
「……モモは? モモはまだ十五歳なんでしょ?」
「……ごめんなさい。嘘を吐きました。私は美希さんと同じ歳ではありません」
「実は年上ってこと? モモも蔵馬さんと同じ秘密警察の人なの?」
「私は……」
モモは美希の三白眼を真っ向から見据える。
「備品です」
「備品…………?」
言葉の意味が分からず、美希は眉をひそめた。
モモはそれ以上語らず、憂悠の色がある微笑みで窓の外に顔を戻す。
ちょうどケンタッキーフライドチキンの赤い看板とすれ違ったところだった。
「クラマさんクラマさん! あれ! あれ食べたいです!」
「寄ってる時間があると思うか」
「帰りに美味しい物食べさせてくれるって言ったのに!」
「状況考えろ。ていうかあれは美味い物には入らん。却下だ」
「あれもきっと美味しいです! だってマクドナルドはすっごく美味しかったですもん!」
「お前五千円持ってマクドナルドに行ったのかよ……」
途端、車内が騒がしくなる。
目まぐるしく変わる周囲の状況に美希は頭が痛くなり、額に手を当てて思わず呟いた。
奇しくも、自分を狙ったヤクザと同じ言葉を。
「もう……一体、何なのよぉ……」
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